1 | アシタカ | (一度ヤックルを降りて、石垣を登る) ヤックル(と呼んで、再び乗る) |
道の先から女の子が3人やってくる | ||
2 | カヤ | 兄(あに)さまーー |
3 | アシタカ | ちょうど良かった。ヒイさまがみな村へ 戻れと。 |
4 | 女の子1 | じいじもそう言うの |
5 | アシタカ | じいじが!? |
6 | 女の子2 | 山がおかしいって。 |
7 | カヤ | 鳥たちがいないの |
8 | 女の子1 | ケモノたちも・・・ |
9 | アシタカ | そうか。じいじの所へ行ってみよう。 みんなは早くもどりなさい |
10 | 女の子たち | ハイッ |
村へと戻る女の子たち | ||
見張り台 | ||
11 | アシタカ | なにか来る。 |
見張り台上 | ||
12 | アシタカ | じいじなんだろう |
13 | じいじ | わからぬ。人ではない |
14 | アシタカ | 村のほうは、ヒイさまがみなを 呼びもどしている。 |
15 | じいじ | 来おった。 |
弓を構えるアシタカ | ||
16 | アシタカ | ・・・・・・・・・!? |
森の中から、体中に蛭のようなものを 這わした化け物が出てくる |
||
17 | じいじ | タタリ神だ! |
18 | アシタカ | タタリ神?! |
19 | タタリ神 | ぐぇぇぇぇぇl! |
タタリ神に驚き、動けないヤックル | ||
20 | アシタカ | ヤックル!逃げろ! |
ヤックルのそばに矢を射る | ||
正気を取り戻したヤックルは その場を逃げる |
||
21 | じいじ | うわっ! |
22 | アシタカ | くっ |
アシタカは、じいじを抱え、 見張り台から飛び出す |
||
タタリ神は、見張り台を壊す | ||
23 | アシタカ | 村の方へ行く!!おそう気だ! |
24 | じいじ | アシタカ!タタリ神に手を出すな! 呪いをもらうぞ!! |
タタリ神の這っていった後を追う | ||
25 | アシタカ | ヤックル!(口笛で呼ぶ) |
やってきたヤックルに飛び乗る | ||
タタリ神を追いつく | ||
26 | アシタカ | 静まれ!鎮まりたまえ! さぞかし名のある山の主と見うけたが なぜ、そのようにあらぶるのか? |
タタリ神は止まらない | ||
村 | ||
女の子たちの前へと現れるタタリ神 | ||
27 | 女の子2 | おばけっ |
28 | カヤ | 村へ! |
タタリ神の前へと回りこむアシタカ | ||
29 | アシタカ | 止まれェ!なぜ我が村をおそう! やめろォー!しずまれーー |
逃げる女の子たち | ||
30 | 女の子A | (転ぶ)アッ! |
31 | カヤ | しっかり! |
ナタを抜いて構える女の子B | ||
32 | アシタカ | ! |
タタリ神の目に矢を射る | ||
33 | タタリ神 | グエエエエエエ・・・ |
34 | アシタカ | 早く! |
タタリ神の蛭がアシタカの右腕をつかむ | ||
35 | アシタカ | うっ! |
蛭を避けながら、 タタリ神の眉間に 矢を射った |
||
36 | アシタカ | ク・・・・・・ |
アシタカの右腕は黒く焼けている | ||
倒れるタタリ神 | ||
37 | 町の人たち | たおした! |
38 | 町の人たち | オオーッ |
39 | 町の人1 | ヒイさまを早く! |
40 | 町の人2 | 火をたやすな! |
41 | アシタカ | (ヤックルの上で苦痛に耐える)くっ! |
42 | カヤ | 兄さま! |
43 | アシタカ | カヤふれるな。ただ傷のではない |
44 | 町の人1 | アシタカが手傷をおった! |
45 | 町の人2 | ヒイさまは? |
46 | ヒイさま | (男に担がれやってくる)みな!それ以上近づい てはならぬぞ! |
47 | カヤ | ヒイさま! |
48 | ヒイさま | この水をゆっくりかけでおやり |
49 | カヤ | ハイ |
大きなひょうたんに入った水を、 アシタカの傷にかける |
||
50 | アシタカ | ツ・・・・・・ |
倒れたタタリ神へ近づくヒイさま | ||
51 | ヒイさま | いずこよりいましあらぶる神とは 存ぜぬも。かしこみかしこみ申す。 この地に塚を築き、あなたの 御霊(みたま)をお祭りします。うらみを 忘れ、しずまりたまえ(拝む) |
52 | タタリ神 | けがらわしい人間どもよ。わが苦しみと 憎しみを知るがいい・・・ |
そう言い残すと、タタリ神の体は一気に腐敗し、 骨だけを残すのみとなった |
||
53 | 町の人1 | (匂いに)ウッ・・・(顔をしかめる) |
夜。村の神殿内 | ||
54 | ヒイさま | (占いをしながら)さて困ったことに なった。かのシシは、はるか西の 土地からやって来た。深傷(ふかで)の 毒に気(きい)ふれ、身体(しんたい)は くさり、走り走る内に呪いを集め、 タタリ神になってしまったのだ。 アシタカヒコや |
55 | アシタカ | はい |
56 | ヒイさま | みなに右腕を見せなさい |
包帯をとってみせる | ||
57 | 町の人たち | おお・・・ |
58 | じいじ | ヒイ様・・・ |
59 | ヒイさま | アシタカヒコや、そなたには自分のさだめを見す える覚悟があるかい? |
60 | アシタカ | ハイ。タタリ神に矢を射るとき、心を決めました |
61 | ヒイさま | ・・・・・・そのアザはやがて骨までとどいて、そな たを殺すだろう |
62 | アシタカ | ・・・・・・ |
63 | じいじ | ・・・ヒイ様、なんとかなりませぬか? |
64 | 町の人1 | アシタカは村を守り、乙女らを守ったのですぞ。 |
65 | 町の人2 | ただ死を待つしかないというのは・・・ |
66 | ヒイさま | 誰にも運命はかえられない。 だが、ただ待つか、みずからおもむくかは決めら れる。見なさい。 |
金属の塊を置く | ||
67 | ヒイさま | あのシシの身体にくいこんで いたものだよ。骨をくだき、はらわたを ひきさき、むごい苦しみをあたえたのだ。 さもなくばシシがタタリ神などに なろうか・・・・・・。西のくにで 何か不吉なことがおこっているのだよ。 その地におもむき、くもりの ない眼(まなこ)で物事を見定めるなら、 あるいはその呪いを断つ道が 見つかるかもしれぬ。 |
68 | アシタカ | ハイ |
69 | 長老 | 大和との戦さにやぶれこの地に ひそんでから五百ゆう余年。いまや 大和の王の力は萎え、将軍どもの牙も 折れたと聞く。だが、我が一族の血も またおとろえた。このときに一族の長と なるべき若者が西へ旅立つのは、 定めかもしれぬ |
70 | アシタカ | ・・・ |
小刀で、自らの髷を落とす | ||
71 | 町の人2 | ウッ・・・(涙) |
アシタカは髪を祭壇に捧げる | ||
72 | ヒイさま | 掟に従い見送らぬ。健やかにあれ |
小さくおじぎをするアシタカ 支度を終え。ヤックルにまたがる |
||
73 | カヤ | 兄さま! |
74 | アシタカ | カヤ!見送りは、禁じられているのに・・・ |
75 | カヤ | おしおきは受けます。どうかこれを。 私のかわりにお伴させてください |
76 | アシタカ | (受け取って)大切な玉(ぎょく)の小刀じゃない か・・・・・・ |
77 | カヤ | お守りするよう息を吹きこめました。いつもいつ も、カヤは兄さまを思っています。 きっと・・・・・・きっと・・・・・・(涙) |
78 | アシタカ | わたしもだ。いつもカヤを思おう |
村を出ていく | ||
山を越え | ||
川を越える | ||
小さな村が見える | ||
79 | アシタカ | 戦さ・・・? |
80 | サムライ1 | まわりこめ! |
81 | サムライ2 | カブトクビだ! |
82 | サムライ1 | 勝負!勝負! |
アシタカに弓を引く男たち アシタカはその場を離れようとする その先で、逃げる女を刀で斬りつけようと |
||
83 | 女 | キャアッ |
84 | アシタカ | やめろーー |
男に弓を引こうとすると、右腕のアザが 蠢き、苦痛をもたらす |
||
85 | アシタカ | ・・・・・・!!アア・・・っ。 |
苦痛に顔を歪めながらも、弓を打つ | ||
86 | アシタカ | ウオーーッ |
斬りかかった男の両腕が切断される | ||
87 | サムライ2 | へ・・・・・・!?ワァッ(倒れる) |
その場を走り抜けるアシタカ | ||
88 | アシタカ | (右腕を抑えながら)なんだ、 この腕は!? |
馬に乗ったサムライが並走してくる | ||
89 | サムライ1 | 逃がさぬぞ!見参! |
90 | アシタカ | 押し通る!邪魔するな! |
矢を撃ってくるサムライ。 アシタカも矢を撃ち返す。 放たれた矢は、サムライ3の首を飛ばす |
||
91 | サムライ2 | 鬼だ・・・ |
山の中の湧き水で、右腕をつける | ||
92 | アシタカ | アザが濃くなっている・・・ |
市場 | ||
93 | ジコ坊 | ズズ・・・(と、椀をかきこむ)は〜・・・なんとも白湯 (さゆ)みたいなめしだな。 |
アシタカの周りに人が集まっている | ||
94 | ジコ坊 | おっ!いた!いた! |
ジコ坊、アシタカの方へとよっていく アシタカは、米を買っている |
||
95 | アシタカ | これでよいか?(と、金の粒を手渡す) |
96 | 売り子 | なんだいこりゃ?おアシじゃないじゃないか。おア シがなきゃ、米を返しな |
97 | ジコ坊 | まてまて拙僧が見てやろう。(砂金を見て) ン・・・・・・!?おっ!!これは・・・・・・。女、これ は砂金の大粒だぞ! |
98 | 売り子 | ? |
99 | ジコ坊 | そうだ。ゼニがいいなら、代金はワシが払(はら) おう。これをゆずってくれ! みなの衆!この近くに両替屋は おらんかの?ア?おらんか? |
100 | 客1 | 砂金だって!? |
101 | 客2 | 砂金だと |
102 | 客3 | 初めてみたな |
103 | ジコ坊 | 拙僧の見るところ、米一俵か・・・いや三俵 か・・・・・・・ |
104 | 客2 | 三俵!? |
105 | 客1 | すげえな |
アシタカは、その場を去ってしまう | ||
106 | ジコ坊 | アッ。ちょっと待ちなさい |
107 | 売り子 | (ジコ坊の手をつかんで)返しとくれ! あたしんだから!! |
ヤックルに乗って進むアシタカを、 追いかけてきたジコ坊 |
||
108 | ジコ坊 | お〜い!そう急がれるな。 イヤ、礼などと申す気はない。 礼を言いたいのは拙僧のほうでな。 田舎侍の小ぜりあいにまきこまれた折、 そなたのおかげで助かったのだ。 イヤァ、鬼神のごときとは正にあれだな。 |
後ろをちらりと見る。 つけている者たちがいる |
||
109 | ジコ坊 | ホッホッ、気づいたか。人前で砂金など 見せるとなァ。まことに人の心の すさむこと麻のごとしだ。 寝こみをおそわれてもつまらぬ。 走るか・・・・・・エ? |
110 | ジコ坊 | ホオ・・・・・・。イノシシがタタリ神になったか・・・。 |
111 | アシタカ | 足跡をたどって来たのですが、里に 降りたとたん、わからなくなりました。 |
112 | ジコ坊 | そりゃそうだろう。そこらを見なさい。 この前来た時には、ここにもそれなりの 村があったのだがナァ。 洪水か地すべりか・・・・・・ さぞたくさん死んだろうに。 戦さ、行きだおれ、病に、飢え。 人界(じんかい)は恨みをのんで、 死んだ亡者でひしめいとる。 タタリというならこの世はタタリそのもの。 |
釜からすくって食べる | ||
113 | ジコ坊 | ハフハフ・・・。うん、うまい。 |
114 | アシタカ | 里へおりたのはまちがいでした。 二人もあやめてしまった。 |
115 | ジコ坊 | おかげで拙僧は助かった。 椀を出しなさい。まず食わねば・・・ 人はいずれ死ぬ。おそいか早いかだけだ (荷物を探る) ホウ、雅(みやび)な椀だな。 そなたを見ていると古い書に 伝わる、いにしえの民を思いだす。 東の果てにアカシシにまたがり、 石のヤジリを使う勇壮なるエミシの 一族ありとな・・・・・・ |
椀によそったものを、アシタカに渡す | ||
116 | アシタカ | (受け取り、すする)・・・・・・。・・・ズ・・・ |
117 | ジコ坊 | ハフハフ(食べる)かんじんなことは、 死にくわれぬことだ。イヤ、これは 師匠の受け売りだがな。 サァ、そなたの米だ。どんどん食え。 |
荷物から、タタリ神の中から取り出した 金属を見せる |
||
118 | アシタカ | このようなものを、 見たことはありませんか? |
119 | ジコ坊 | (受け取る)・・・・・・。これは? |
120 | アシタカ | イノシシの身体からでてきました。 巨大なイノシシにひん死の傷を あたえたものです。 |
金属を返し、食事を続けてから | ||
121 | ジコ坊 | これよりさらに西へ西へと進むと、 山の奥のまた山奥に人をよせつけぬ 深い森がある。シシ神の森だ。 |
122 | アシタカ | シシ神の森? |
123 | ジコ坊 | そこでは、ケモノはみな大きく太古のままに生き ているときいた。 ズズズ・・・(食べる) |
124 | アシタカ | ・・・ |
早朝。ジコ坊には声をかけぬまま、 アシタカはその場を去る |
||
125 | ジコ坊 | (寝ていたが)やはり行くか・・・(また眠りに付く) |
雨の中、山道を移動する者たち | ||
126 | 牛飼い | ホイッ、ホイッ(と、牛を進ませる)それっ |
127 | エボシ | みな、あとわずかだ!油断すまいぞ! |
128 | 町の人1 | でたぞォ!犬神だァ! |
山を白い犬が2匹。1匹の上には人が乗っている | ||
129 | エボシ | 牛を落ち着かせろ!焦らずに陣を組め! |
130 | ゴンザ | せいて火薬をぬらすな! 充分に引きよせよ! |
石火矢衆が、構える | ||
犬が2匹接近してくる | ||
131 | エボシ | 一番、放てっ! |
火を放つが、激しい身のこなしで 当てることができない |
||
132 | エボシ | 二番、放てェ! |
当たりはしないが、 近づくこともできない犬たち |
||
133 | ゴンザ | 化け物め、口ほどにもない |
134 | エボシ | あれは子供だ。母親がなぜ来ない・・・・・・ |
逆の方向から、2匹よりも大きな犬が エボシたちに飛び掛ってくる |
||
135 | モロ | っ! |
136 | エボシ | モロだ!! |
行列へ跳びかかり、何人かの人と 牛が崖から落ちていく |
||
137 | 甲六 | ギャアアア・・・っ(転落) |
138 | エボシ | (石火矢を構え)モロ、来い!! |
弾を発射 モロの右肩に着弾 |
||
139 | モロ | ググッ |
そして、至近距離でのゴンザが 石火矢発射 モロは崖下へと落ちていく |
||
140 | ゴンザ | やりました! |
141 | エボシ | きやつは不死身だ。 このくらいでは死なん! |
142 | ゴンザ | だいぶやられましたな。 |
143 | エボシ | すぐ出発しよう |
144 | ゴンザ | 谷に落ちた者はいかがします? |
145 | エボシ | 隊列を組み直せ!! |
谷川を進むアシタカ | ||
上流から、牛や人の死体が流れてくる | ||
146 | アシタカ | 息がある!!しっかりしろ!! |
一人を川から引き上げ | ||
もう一人、息がある人を見つけ、救助する | ||
147 | 甲六 | ううっ・・・ |
ヤックルが何かの気配に気づく | ||
148 | アシタカ | ! |
対岸に、傷ついた大犬 | ||
大犬につかづく2匹の犬と女 | ||
149 | サン | (モロの傷を見て)アア・・・・・・ |
150 | モロ | グルルル・・・ |
151 | サン | (モロの傷口に顔をツッコミ、血を吸い出 す)・・・・・・プッ |
152 | モロ | (アシタカに気づき)ウウウ・・・ |
153 | サン | (アシタカに気づく)! |
154 | アシタカ | ・・・・・・!! |
155 | サン | (アシタカを睨みつけながら立ち上がり)・・・プ ッ・・・(と、血を吹く) |
アシタカはサンに姿が見えるように 岩に上がる |
||
156 | アシタカ | わが名はアシタカ!東の果てより この地へ来た!そなたたちは シシ神の森に住むと聞く古い神か?! |
モロはのろのろと立ち上がり、歩き出す | ||
157 | サン | (犬にまたがり)去れ! |
犬たちは森の中へと去っていく | ||
158 | 甲六 | ヒーーーッ(遠くで悲鳴) |
159 | アシタカ | !(甲六たちのところへ戻る) |
160 | 甲六 | アワ、アワ、アワ・・・ |
161 | アシタカ | ・・・・・・・!? |
コダマが1匹 | ||
162 | アシタカ | コダマ?!ここにもコダマがいるのか |
163 | 甲六 | わーーっ |
164 | アシタカ | 静かに!動くと傷にさわるぞ。 好きにさせておけば悪さはしない。 森が豊かな印(しるし)だ! |
165 | 甲六 | こいつらは、シシ神を呼ぶんだ |
166 | アシタカ | シシ神?大きな山犬か? |
167 | 甲六 | ちがう!もっとおっかねぇ、化物の親玉だ。 |
すっとコダマは消える | ||
168 | 甲六 | アアッ、消えた! |
きょろきょろする甲六 | ||
169 | 甲六 | アアッ!! |
別のコダマがアチラコチラに出現 | ||
170 | 甲六 | ヒイ・・・・・・ |
171 | アシタカ | ヤックルが平気でいる。 危険なものは近くにいない |
どんどんと現れるコダマ | ||
172 | 甲六 | ヒイ・・・(汗) |
173 | アシタカ | (コダマに)すまぬが、そなたたちの森を 通らせてもらうぞ |
甲六をヤックルに乗せ、森を進む | ||
174 | 甲六 | (あちこちにコダマだらけ)おねげぇです。もどりま しょうよ。むこう岸なら道が ありやす。この森を抜けるなんて無茶だ。 |
175 | アシタカ | (意識のないもう一人を背負いながら歩く)流れが 強すぎて渡れない。 それにこのケガ人は早くしないと 手おくれになるぞ。 |
先を歩くコダマ | ||
176 | アシタカ | フフ。道案内をしてくれてるのか。 迷いこませる気なのか・・・。 |
177 | 甲六 | だんなー、こいつらワシらを帰(かえ)さねぇ気なん ですよ。どんどんふえてやすぜ。 |
178 | アシタカ | ハア、ハア・・・。・・・・・・!? これがおまえたちの母親か。リッパな樹だ |
山間の空間が出てくる | ||
山犬とサンの足跡をみつける | ||
179 | アシタカ | (!?)あの少女と山犬の足跡だ! ここは彼らのナウバリか・・・ |
180 | 甲六 | ダンナ・・・こんどこそヤバイですよ。ここはあの世 の入り口だ! |
181 | アシタカ | そうだな。ちょっと休もう |
川の水を汲もうとする | ||
シシ神の足跡を見つける | ||
182 | アシタカ | 足跡・・・?!ひずめが三つ・・・ まだ新しい |
森の奥深くを見ると シシ神らしき生き物をみつける するとアシタカの腕のアザが強く蠢いた |
||
183 | 甲六 | だ、ダンナ!どうしたんで |
腕を押さえつけ、水の中に腕を入れる | ||
184 | アシタカ | くっ!ハァハァ |
シシ神らしき生き物は去っていく | ||
185 | 甲六 | ダンナ?大丈夫ですかい?顔色が 真っ青ですぜ?だから、ヤバイって! |
もう一人の男に水を飲ませるアシタカ | ||
186 | アシタカ | おまえ・・・何かみたか? |
187 | 甲六 | え? |
188 | アシタカ | いや、いい・・・ (もう一人の男に)もうちょっとの辛抱だ |
189 | 男 | すまねえ |
190 | アシタカ | 行ってしまった・・・ |
また、山道を歩くアシタカ | ||
191 | アシタカM | なぜか、急に身体が軽くなった |
192 | 甲六 | あれ?痛くねえ・・・治った! ・・・いて、いてて・・・やっぱ、折れてる |
森を抜け、タタラ場に着く | ||
193 | 甲六 | ダンナ、すげえ!ドンピシャダ! タタラについた! |
194 | アシタカ | まるで城だな。 |
195 | 甲六 | エボシさまの大タタラでさ。 砂鉄(てつ)をわかして鉄を つくってるんです。 |
196 | 甲六 | おーい!おーい! |
197 | 町の人1 | 森から人が来る |
198 | 町の人2 | もののけか? |
199 | 甲六 | おれだ〜牛飼(うしか)いの甲六だ〜 |
200 | 町の人3 | なにィ甲六が・・・ |
201 | 町の人1 | カカァにしらせろ |
202 | 町の人2 | うそじゃねぇ!いま舟でこっちに来る |
茶屋で字を書くゴンザ | ||
203 | ゴンザ | 何事か!?おれが字を書いてるときは しずかにしろ! |
204 | 町の人3 | 死んだはずの甲六がむこう岸に でたんでさぁ |
川岸に集まる町の人 | ||
みな、甲六に話しかける | ||
205 | 町の人1 | 幽霊じゃねぇな |
206 | 町の人2 | 他のヤツはどうした |
207 | 町の人3 | あと、二人落ちたんだ |
208 | 甲六 | 助けられたのはおれたちだけだ |
石火矢衆に抱えられる男 | ||
209 | 町の女 | 死ぬのは牛飼いばかりさ |
210 | ゴンザ | (野次馬達に)開けろ |
211 | 町の人1 | ゴンザ様・・・ あのずきんの男何者でしょうか? |
212 | ゴンザ | 見慣れぬ姿だな・・・ |
213 | 甲六 | 石火矢の衆よ。このダンナが ずっとおぶってくださったんだ。 礼(れい)を言っとけ |
214 | ゴンザ | そこの者、まて!(アシタカに 近寄っていく)ケガ人をとどけてくれた ことまず礼を言う。だが得心がいかぬ。 われらがここへついて半刻もせぬうちに おまえは来た。しかも谷底から大の大人を かつぎシシ神の森をぬけてだと・・・ |
215 | トキ | (甲六に駆け寄るトキ) 甲六〜生きとったんか〜。 |
216 | 甲六 | おトキ〜! |
217 | トキ | (甲六の足を見て) 牛飼いが足をくじいてどうやって おマンマくってくんだよ |
218 | 甲六 | んなこと言ったってよ |
219 | トキ | 心配ばかりかけやがって いっそ山犬にくわれちまえば よかったんだ。そうすりゃあたしは もっといい男を見つけてやる |
220 | 甲六 | おトキ〜カンニンしてくれよ〜 |
221 | ゴンザ | トキ〜夫婦ゲンカはよそでやらんかい |
222 | トキ | (ゴンザに詰め寄る) なにさ。えらそうに。なんのための 護衛なのさ。ふだんタタラのひとつも ふまないんだ いざというときは生命をはりやがれ |
223 | ゴンザ | しかたがなかろう・・・。 |
224 | トキ | ありがと あんな亭主でも助けてくれてうれしいよ |
225 | アシタカ | よかった。つれて来ては いけなかったのかと心配してしまった |
大笑いするトキ | ||
226 | トキ | へー、いい男じゃないか ちょっと顔を見せておくれよ |
227 | エボシ | ゴンザッ!あとで礼を言いたい。 客人を案内しなさい |
228 | エボシ | 甲六、よく帰って来てくれた。 すまなかったな。 |
229 | トキ | そんな滅相もない。エボシさま バカがつけあがるだけですよ |
230 | エボシ | トキも 堪忍(かんにん)しておくれ。 わたしがついていたのにザマァなかった |
231 | トキ | いいえ。男たちだけだったら 今頃みんな仲良く山犬の腹の中ですよ |
232 | エボシ | 旅のおかたゆるりと休まれよ |
マスクを取り、エボシに一礼するアシタカ | ||
233 | トキ | (振り返り)あらっ、いい男じゃない! |
働く町の人たち | ||
夜、町の中 | ||
234 | 町の人たち | そ-れ |
235 | 町の人2 | モロをやっつけて運んだ米だ! ありがたく食えよ! |
居間で男達とアシタカが食事をしている | ||
236 | 町の女1 | どこどこ? |
237 | 町の女2 | え?あの人? |
238 | 町の女3 | ほんとトキの言ったとおりじゃん |
239 | 町の女1 | いい男ね〜 |
240 | 町の女2 | ちょっと若すぎない? |
241 | 町の人3 | しずかにしねぇか。通夜をやってるんだぞ |
242 | 町の人1 | いい男ならここにもいるぞ |
243 | 町の女1 | やなこった。牛飼いなんて |
244 | 町の女2 | ネィ、旅のおかたあたいたちの所へきなよ |
245 | 町の女3 | こんなクサイ小屋はやめてさ |
246 | 町の人2 | なんでェ。おれたちが生命がけで 運んだ米をくらってよ 口が腐るぜ! |
247 | 町の女1 | その米を買う鉄(てつ)はだれが つくってるのさ。あたいたちは 夜っぴいてタタラをふんでるんだ |
248 | アシタカ | よかったらあなたたちのはたらく所を 見せてください |
249 | 町の女2 | おしろいぬってタタラを踏まなきゃ |
250 | 町の女3 | 紅(べに)もさす? |
251 | 町の女1 | きっとだよ- |
252 | 町の女2 | まってるからね〜 |
253 | 町の人3 | ダンナ気をわるくしねぇでください (酒を飲む)エボシさまが 甘やかしすぎるんで |
254 | アシタカ | いい村は女が元気だと聞いています |
255 | 町の人1 | でもなぁタタラ場に女がいるなんてなぁ。 ふつうは鉄を汚すってそりゃ〜〜 いやがるもんだ |
256 | 甲六 | おっ!はじめやがった。エボシさまと きたら売(う)られた娘を見ると みんなひきとっちまうんだ。そのくせ掟も タタリもヘッチャラなコワイ人だよ |
257 | 町の人2 | そうそう。ナゴの守(かみ)を やったときなんか見せたかったぜ |
258 | アシタカ | ナゴの守?! |
259 | 町の人3 | すげえでかいイノシシでよ。このあたりの ヌシだったのよ。でよ、だれも山に 近よれねぇ。お宝の山を見ながら 人間様(さま)はをくわえてたのよ |
260 | 町の人1 | この下じゃ砂鉄(さてつ)を とりつくしちまったからな |
261 | アシタカ | 何人ものタタラ師がここをねらってよ。 みんなやられちまったんだ。 おれたちの稼業は山をけずるし 木を切るからな。山の主が怒ったてな。 そこへエボシさまが 石火矢衆(いしびやしゅう)を つれてあらわれたってわけだ |
回想シーン 山が焼かれ、山の主が逃げる |
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262 | 町の人2 | ダンナ、どうしたんで? |
263 | アシタカ | そのイノシシのことを考えていた。 いずくで果てたかさぞ。うらみは深かろう |
鉄を叩いているエボシ | ||
264 | エボシ | アシタカとやらまたしてすまぬな。 あすのおくりのしたくに手間どってね。 いい鋼(はがね)だ |
265 | エボシ | ちょっと休もう。そなたを侍どもか、 もののけの手先とうたがう者(もの)が いるのだ。このタタラ場を狙う者が たくさんいてね。 旅のわけを聞かせてけれぬか |
266 | アシタカ | (腕のあざをみせて) このつぶてにおぼえがあるはず。 巨大なイノシシ神の骨をくだき 肉を腐らせタタリ神にしたつぶてです。 このアザはそのイノシシにとどめを さしたときにうけたもの 死にいたる呪いです |
267 | エボシ | そなたの国は? 見なれぬシシに乗(の)っていたな |
268 | アシタカ | 東と北のあいだより・・・ それ以上は言えない |
269 | ゴンザ | (刀を手にかけ)きさま! 正直にこたえぬとたたっきるぞ! |
270 | エボシ | そのつぶての秘密を調べてなんとする |
271 | アシタカ | くもりなきまなこでものごとを 見定(みさだ)め、決める |
272 | エボシ | 曇りなきまなこ・・・ フフア-ッハハハハハハハわかった。 わたしの秘密を見せよう。来なさい。 ゴンザ!あとをたのむよ |
エボシの後を付いていくアシタカ | ||
273 | エボシ | ここはみなおそれて近よらぬ。 わたしの庭だ。 秘密をしりたければ来なさい |
274 | 働いてる人1 | ちょうどくみあがったところですよ |
275 | エボシ | (石火矢と持って) まだちょっと重いな |
276 | 働いてる人2 | あまりけずると銅金がはじけます |
277 | エボシ | わたしだけが使うのではない。 ここの女たちにもたせるのだ。 (アシタカのほうを向いて) この者たちが考案した 新しい石火矢(いしびや) だ。 明国(みんこく)のものは重くて使いにくい。 この石火矢なら化物(ばけもの)も 侍(さむらい)のヨロイもうちくだけよう |
278 | 働いてる人3 | コワヤコワヤエボシさまは 国くずしをなさる気だ |
279 | エボシ | いそがせてすまぬな。 あとで酒などとどけよう |
280 | アシタカ | あなたは山の犬の森をうばい タタリ神にしてもあきたらず その石火矢でさらに新(あら)たなうらみと 呪いを生みだそうというのか?! |
281 | エボシ | そなたには気の毒だった。 あのつぶて、たしかにわたしの放ったもの おろかなイノシシめ。呪うならわたしを 呪えばいいものを |
アシタカの右腕が剣を取ろうとしたが 左腕でそれを抑える |
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282 | エボシ | その右腕はわたしを殺そうとしているのか |
283 | アシタカ | 呪いが消えるものならわたしもそうしよう。だがこ の右腕はそれだけではとまらぬ。 |
284 | エボシ | ここの者すべてを殺すまでしずまらぬか |
285 | 働いてる人1 | エボシ様、長が何か申しております |
286 | 長 | エボシさまその若者の力 あなどってはなりません お若いかた、わたしも 呪われた身ゆえ。あなたの怒りや 悲しみはよくわかる。わかるが どうかその人を殺さないでおくれ。 その人はわしらを人として あつかってくださったたったひとりの人だ。 わしらの病(やまい)を おそれずわしのくさった肉を 洗い布(ぬの)をまいてくれた。 生きることはまことに苦しくつらい・・・ 世(よ)を呪い人を 呪いそれでも生きたい・・・ どうかおろかなわしにめんじて・・・ |
犬の遠吠え それに向かって石火矢を放つエボシ |
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287 | エボシ | また来ていたか。夜になると ああしてもどってくるのだ。 山をとりもどそうと木を植(う)えにくる。 アシタカ、ここにとどまり力をつくさぬか |
288 | アシタカ | あなたはシシ神の森まで 奪うつもりか?! |
289 | エボシ | 古い神がいなくなればもののけたちも ただのケモノになろう。森に光が 入り山犬どもがしずまれば ここは豊かな国になる。 もののけ姫も人間にもどろう |
290 | アシタカ | もののけ姫・・・ |
291 | エボシ | 山犬に心をうばわれたあわれな娘だ。 わたしを殺そうとねらいつづけている。 シシ神の血はあらゆる病をいやすと聞く 業病に苦しむ、あの者たちを癒し そなたのアザを消す力もあるかも しれぬぞ! |
292 | 働いてる人2 | エボシさま、首尾(しゅび)は いかがでしょうや? |
293 | エボシ | 上出来(じょうでき)だ。 正(まさ)に国くずしにふさわしいが・・・ やはりちょっとおもいな |
294 | 働いてる人3 | へへへ・・・こわやこわや |
タタラ場に入っていくアシタカ | ||
295 | 町の女1 | あらっ?!あんた |
296 | アシタカ | おトキさん、わたしもふませてくれ。 (町の女に)かわってくれないか。 |
297 | トキ | せっかくだからかわってもらいな |
298 | 町の女2 | あ・・うん |
299 | 町の女たち | すごい力! |
300 | トキ | ねっイイ男だろう。そんなにリキむと つづかないよ。旅人(たびびと)さん |
301 | アシタカ | きびしい仕事だな |
302 | トキ | そりゃそうさ 四日五晩(よっかいつばん)ふみめくんだ |
303 | アシタカ | ここのくらしはつらいか? |
304 | トキ | そりゃあさ・・・でも下界(げかい)に くらべりゃずっといいよ |
305 | 町の女3 | お腹いっぱい食べられるし。 男がいばらないしさ |
笑う女達 | ||
夜の森を山犬にまたがり進むサン | ||
306 | 山犬 | (サンに鼻を撫でられ)ウ〜〜ッグルルル |
仮面を被るサン | ||
307 | 町の女1 | あした行っちゃうの? もっといればいいのに |
308 | アシタカ | ありがとう、でもどうしても 会(あ)わなければならない者がいるんです |
309 | 町の女2 | ここではたらきなよ |
310 | アシタカ | ハッ |
山犬に乗って迫り来るサン | ||
311 | アシタカ | 来る! |
312 | 町の人1 | もののけ姫だ! |
サンに向かって石火矢を放つ石火矢衆 | ||
313 | 町の人1 | うわっ!くっ。うわっ〜 |
314 | アシタカ | ! |
場内に侵入したサン 屋根を走り回る |
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315 | 町の人2 | 姫だ〜! |
アシタカに向かって剣を振るうサン | ||
316 | アシタカ | (サンの斬撃を受け止め)やめろ! |
317 | アシタカ | くっ! |
318 | アシタカ | そなたと戦(たたか)いたくない! |
319 | 町の人3 | 入ったのは姫ひとりだ |
320 | 町の人1 | 御殿のほうへ行くぞ! |
321 | ゴンザ | かがり火をふやせ。 石火矢衆は柵(さく)をかためて 外へ逃すな! |
322 | 町の人2 | もち場(ば)をはなれるな |
323 | 町の女2 | この屋根(やね)のにいるらしいよ |
324 | トキ | さわぐんじゃない。休まずふみな! 火をおとすととりかえしがつかないよ |
325 | エボシ | ひとりか? |
326 | ゴンザ | はっ、よほど追いつめられたと見えます。 エボシさまをねらってのことでしょう |
327 | エボシ | しかたがない。来なさい |
エボシの後を付いてくる女たち エボシは町の中央広場へ |
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328 | エボシ | もののけ姫!きこえるか。わたしは ここにいるぞ。おまえが一族の仇を うとうというならこちらにも山犬に くい殺された夫(おっと)の無念をはらそうと 心に決めた者たちがいる。 |
329 | 町の女3 | でておいて! 今夜こそケリをつけてやる |
屋根の上に現れたサン | ||
330 | 町の人たち | 出た〜いたぞ〜! |
331 | アシタカ | (バカな・・・?!) |
332 | 町の人3 | 前をあけろ!流れ弾にあたるぞ! |
屋根の上で発砲準備をする石火矢衆 | ||
333 | アシタカ | (屋根の上の石火矢衆を見て) 罠(わな)だ!(・・・)やめろ-! |
334 | アシタカ | 山犬の姫、森へ帰(かえ)れ! みすみす死ぬなしりぞくも勇気だ! |
335 | ゴンザ | やはりあいつ! |
336 | エボシ | 好きなようにさせておけ |
エボシに向かって走っていくサン | ||
337 | アシタカ | くっ! |
石火矢衆の一斉射撃 屋根にあたり、爆風で屋根を 転がり落ちるサン |
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338 | ゴンザ | やった〜!おちるぞ! |
339 | エボシ | 動くな!首だけになっても 食らいつくのが山犬だ! |
340 | エボシ | おちた所をねらいな! |
尋常ではない力で 屋根の木を取ろうとするアシタカ |
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屋根から落ちて着地するサン | ||
341 | エボシ | はなて! |
女たちが石火矢でサンを撃ち 一発がサンの仮面に命中する |
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342 | ゴンザ | やった- |
343 | アシタカ | 動くなー(屋根をゴンザに向かって投げる) |
344 | ゴンザ | (たいまつに木が当たり火が散る)あちち |
345 | アシタカ | (サンに駆け寄り)しっかりしろ! |
346 | サン | (目ざめてアシタカに剣を振るう)えいっ! |
347 | アシタカ | やめろ〜! |
アシタカの脇を抜け、エボシのもとへ 走るサン |
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348 | ゴンザ | ぬん!(サンに向かって刀を振るう) (サンがジャンプをしてかわす) なにっ!? (ゴンザの顔面を踏むサン)うおー!? |
349 | サン | うわー!!(エボシに向かっていく) |
サンの攻撃を受け止め、反撃するエボシ | ||
350 | 町の女1 | 袋(ふくろ)のネズミだ! 逃がしちゃだめだよ |
二人の戦いをみているアシタカ 右腕のあざから黒い蛇のような ものが蠢く |
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351 | 町の人1 | ゴンザさまお気をたしかにっ |
352 | ゴンザ | 俺にかまうな!行け! |
353 | ゴンザ | (アシタカを見て)ウッ |
354 | ゴンザ | うぬは・・・やはり・・・ もののけのたぐいかっ?!とまれぇっ! |
ゴンザの言葉無視して進むアシタカ | ||
355 | アシタカ | どいてくれ |
ゴンザの剣を素手で曲げて脇を通る 野次馬を割って二人の戦いの中に入る そして、二人の腕を掴む |
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356 | エボシ | なんのまねだアシタカ。 |
357 | アシタカ | この娘の生命(いのち)わたしがもらう。 |
アシタカの腕に噛み付くサン | ||
358 | エボシ | その山犬を嫁(よめ)にでもする気か?! |
359 | アシタカ | そなたの中には夜叉がいる この娘の中にもだ |
あざから黒い蛇のようなものが出てくる | ||
360 | 町の人たち | おお・・・ |
361 | アシタカ | みんな見ろ。これが身の内に 巣(す)くう憎(にく)しみと恨みの姿だ・・・ 肉をくさらせ死を呼びよせる呪いだ! これ以上憎しみに身をゆだねるな! |
362 | エボシ | さかしらにわずかな不運を見せびらかすな |
363 | サン | アアッうわっ |
364 | エボシ | その右腕切りおとしてやろう! |
エボシの一撃をかわし、反撃。 エボシを気絶させ、サンも同様に 気絶させる |
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365 | 町の女 | エボシさま! |
366 | アシタカ | だれか手をかしてくれ。 (駆け寄る町の女) 心配するな気がつく。 この娘、わたしがもらいうける |
367 | 町の女 | (石火矢を構えながら) おまちっ!逃がしはしないよ! よくもエボシさまを・・・動くんじゃない! |
368 | 町の女 | キヨ!やめな! |
誤って発砲。弾がアシタカの腹部を貫通 しかし、アシタカは門への歩みを止めない |
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369 | 町の女 | あたったのに歩いとる・・・ |
ゴンザ | エボシ様は? | |
町の人 | ご無事です | |
372 | ゴンザ | おれの石火矢をもってこい! 石火矢衆はここに集まれ! このまま逃がしてなるか! |
タタラ場の前をサンを担いで歩くアシタカ | ||
373 | 町の女 | おトキ!早く! |
374 | トキ | あんた?! (地面を見て、血が出ていることに気づく) |
門の前 | ||
375 | 町の人 | だんな、ここは通れねぇ。 ゆるしがなければ門はあけられねぇんだ。 |
376 | 門番1 | あなたは仲間を助けてくださった |
377 | 門番2 | 敵にしとうありませんどうかおもどりを |
378 | アシタカ | わたしは自分でここへ来た。 自分の足でここをでて行く |
自力で門を開けようとするアシタカ 徐々に出血もひどくなる |
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379 | 町の人 | だんな、いけねェ!死んじまう! |
門が開く | ||
380 | 町の人たち | 動いた!すげぇー |
381 | 門番1 | アア〜 |
山犬が走ってくる | ||
382 | ゴンザ | どけ〜!山犬だー! (石火矢を構える) ん?火?火は? |
383 | アシタカ | (山犬たちに向かって) やめろ!そなたたちの姫は無事だ! いまそっちへ行く!行こう、ヤックル。 (町の人へ)世話になった |
門が閉まる | ||
384 | 町の人 | 行ってしまわれた |
岩場を走っている ヤックルにまたがっている二人 しかし、途中で落ちるアシタカ その時、山犬がアシタカの頭にかぶり付く |
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385 | サン | おまち!わたしのエモノだよ。 (アシタカに近づくサン) おまえ射たれたのか。死ぬのか。 死の前に答えろ! なぜわたしの邪魔をした? |
386 | アシタカ | そなたを死なせたくなかった |
387 | サン | 死などこわいもんか!人間を 追い払(はら)うためなら生命などいらぬ! |
388 | アシタカ | わかっている・・・最初に会ったときから |
389 | サン | 余計な邪魔をして、無駄死にするのは おまえのほうだ! (アシタカの喉に剣を突きつける) そのノド切りさいて。二度とムダ口が たたけぬようにしてやる! |
390 | アシタカ | 生きろ・・・ |
391 | サン | まだ言うか!人間の 指図(さしず)はうけぬ! |
392 | アシタカ | そなたは美しい・・・ |
393 | サン | ! |
394 | 山犬 | どうしたサン! オレがかみくだいてやろうか? |
石を投げる猩々(しょうじょう)たち | ||
395 | サン | はっ。猩々たち・・・ |
396 | 山犬 | 猩々ども・・・われらがモロの一族と しっての無礼か?! |
397 | 猩々たち | ここはわれらの森。その人間よこせ。 人間よこしてさっさと行け |
398 | 山犬 | うせろ!わが牙がとどかぬうちに! |
399 | 猩々たち | オレたち人間くう。 その人間くうその人間くわせろ |
400 | サン | 森の賢者とたたえられるあなたたちが なぜ人間などくおうというのか? |
401 | 猩々たち | 人間やっつける力ほしい、だからくう |
402 | サン | 人間を食べても人間の力は 手に入らない。あなたたちの血が けがれるだけだ |
403 | 猩々たち | 木・・・うえた木・・・うえみんな人間め 森もどらない。人間殺したい |
404 | サン | わたしたちにはシシ神さまがついてる。 あきらめないで木をうえて・・・ モロの一族はさいごまで戦う |
405 | 猩々たち | シシ神さま戦わない。わしら死ぬ。 山犬の姫、平気・・・人間だから・・・ |
406 | サン | ! |
407 | 山犬 | 無礼なサルめっ! そのクビかみくだいてやる! |
408 | サン | おやめっ!平気・・・気にしない・・・ おまえたち先に帰りな。この人間の しまつはわたしがする |
409 | 山犬 | (ヤックルを見て) あいつは?食べていい? |
410 | サン | 食べちゃダメ! |
411 | サン | さあ、行きな! |
412 | サン | (ヤックルへ) おいで!仲なおりしよう! おまえの主人を運ぶから・・・ 力をかしておくれ |
アシタカをヤックルに乗せ シシ神の森奥深くへ |
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池のほとりに着く。アシタカを降ろし 小さな離れ小島に連れて行くサン |
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413 | サン | おまえはかしこいね。この島には のぼらないほうがいい・・・ (自分の体の匂いを嗅いで)人間くさい。 (ヤックルに近づき、手綱を取る) すきな所へ行き。好きに生きな |
その場を離れるサン 大量のコダマが音を立てる ディダラボッチ登場 |
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414 | ジコ坊 | おお〜でたぁ。ディダラボッチだ! ついに見つけた。なにをしとる! 早く見んか!なんのために こんなクサイ毛皮をかぶって 耐えてきたんじゃ |
415 | 狩人1 | シシ神さまを見ると目がつぶれるワイ |
416 | ジコ坊 | それでもヌシは西国一の狩人か? この天朝(てんちょう)さまの書きつけを なんとこころえる。 天朝さまがシシ神退治を みとめとるんだぞ! 早くしろ! |
417 | ジコ坊 | ディダラボッチはシシ神の夜の姿だ。 いまに夜から昼(ひる)の姿に かわるそこがシシ神のすみかだ。 おおっ、消えるぞ。あそこだ! |
シシ神がアシタカに近づく | ||
朝 山間を歩くジコ坊 茂みの隙間から猪の行列をみる |
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418 | 狩人1 | ジコ坊さま |
419 | ジコ坊 | 判っとる |
420 | 狩人1 | あそこを |
421 | ジコ坊 | おお、これは?なんとも おびただしい数(かず)だな。 |
狩人1 | ありゃあこの森のもんじゃねぇ。 それぞれいずくかの山の名のある主だ。 むっ。あれは?鎮西(ちんぜい)の 乙事主(おっことぬし)だっ! |
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乙事主登場 | ||
423 | ジコ坊 | 鎮西(ちんぜい)?! 海を渡って来たと言うのか? |
424 | 狩人1 | まちがいねぇ。あの四本牙! 一族をひきいて来やがったんだ! |
425 | ジコ坊 | (乙事主に見られているのに気づく) ばれたっ!ひきあげだ!いそげ! |
426 | 乙事主 | ぶぎゃー |
427 | イノシシたち | ピ-ギャ-ブヒ-ピギャー |
川の岩場 | ||
428 | ジコ坊 | 早くしろ! |
シシ神の森 | ||
429 | アシタカ | うっう・・・ん、はっ!傷がない! |
近寄るヤックル | ||
430 | アシタカ | ヤックル |
431 | サン | 目がさめてたらヤックルに礼を言いな。ずっとお まえを守っていたんだ |
432 | アシタカ | どうしてヤックルの名を・・・ |
433 | サン | 自分からいろいろ話してくれた。 おまえのことも古里(ふるさと)の 森のことも。シシ神さまがおまえを 生かした。だから助ける |
434 | アシタカ | ふしぎな夢を見た。金色の鹿だった・・・ |
435 | サン | 食べろ |
干し肉をちぎってアシタカに食べさせる | ||
436 | サン | かめ! |
噛めずに干し肉を落としてしまう | ||
437 | アシタカ | おまえ・・・ |
サンが干し肉を噛み砕き、アシタカに 口移しで食べさせる |
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モロと猪達が対峙する | ||
438 | イノシシ | われらは人間を殺し森を守るために 来た・・・なぜここに人間がいる?! |
439 | モロ | わたしの娘だ。人間などどこにでもいる。 自分の山にもどりそこで殺せばいい |
440 | イノシシ | シシ神の森を守るために殺すのだ! なぜ人間がここにいる・・・ |
441 | サン | この人間の傷をシシ神さまがいやした。 だから殺さずにかえす |
442 | イノシシたち | シシ神が人間を助けいやしただと! なぜナゴの守(かみ)を 助けなかったのだ! シシ神は森の守り神ではないのか?! |
443 | モロ | シシ神は生命をあたえもし奪いもする。 そんなことも忘れてしまったのか、猪ども |
444 | イノシシたち | ちがう。山犬がシシ神をひとりじめしてる からだ。ナゴを助けず裏切ったからだ! |
445 | モロ | きやつは死をおそれたのだ。 いまのわたしのように。 わたしの身体にも人間の毒つぶてが 入っている。ナゴは逃げわたしは 逃げずに自分の死を見つめている |
446 | サン | モロだからシシ神さまに・・・ |
447 | モロ | サン!わたしはすでにじゅうぶんに 生きた。シシ神は傷をなおさず生命を すいとるだろう |
448 | サン | そんなはずはない! 母さんはシシ神さまを守ってきた |
449 | イノシシたち | 騙されぬぞ!ナゴは美しく強い兄弟だ! 逃げるはずがない! 山犬どもが食(く)っちまったんだ! |
450 | サン | 黙れ! 母さんをバカにするとゆるさんぞ! |
451 | アシタカ | あらぶる山のかみがみよ、きいてくれ! |
アシタカを見る猪たち | ||
452 | アシタカ | ナゴの守(かみ)にとどめをさしたのは わたしだ。村をおそったタタリ神を わたしはやむなく殺した。 大きな猪神だった。これがあかしだ! あるいはこの呪いをシシ神が といてくれぬかとこの地へ来た。 だが・・・シシ神は傷はいやしてもアザは 消してくれなかった。呪いがわが身を くいつくすまで苦しみ生きろと・・・ |
453 | モロ | 乙事主だ・・・ 少しは話のわかるヤツが来た |
アシタカに近づく乙事主 | ||
454 | サン | 待って、乙事主さま! この人を食べてはダメ! |
455 | 乙事主 | モロの娘だね。うわさはきいていたよ |
456 | サン | あなた目が・・・ |
457 | アシタカ | 山犬の姫かまわない。 ナゴの守(かみ)のさいごを伝えたいから |
アシタカの匂いを嗅ぐ乙事主 | ||
458 | 乙事主 | ありがとうよ、お若いの・・・悲しいことだが 一族からタタリ神がでてしまった・・・ |
459 | アシタカ | 乙事主どのこのタタリを消す術は ないのだろうか・・・ |
460 | 乙事主 | お若いの森を去れ次に会うときは 殺さねばならぬ |
461 | モロ | 乙事主よ、数(かず)だけでは 人間の石火矢には勝てぬぞ! |
462 | 乙事主 | モロ、わしの一族を見ろ! みんな小さくバカになりつつある。 このままではわしらはただの肉として 人間に狩られるようになるだろう・・・ |
463 | モロ | 気に入らぬ一度にケリをつけようなどと 人間どもの思うつぼだ! |
464 | 乙事主 | 山犬の力をかりよいとは思わぬ。 たとえ・・・わが一族ことごとく滅ぶとも 人間に思いしらせてやる! |
去る乙事主と猪たち 池の上に現れたシシ神 |
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465 | サン | ・・・シシ神さま・・・ |
合戦場 | ||
466 | 町の人 | ドウドウ。牛をちらすな! |
467 | エボシ | まだ撃つな。ひきよせろ! |
468 | 侍たち | (エボシ陣営に突っ込んでいく) うわー |
469 | エボシ | はなてぇ! |
石火矢衆一斉射撃 | ||
470 | 侍 | ひいい・・・ |
471 | ゴンザ | 弾込め、急げェ! |
472 | ジコ坊 | (戦場をみて) やれやれ。エボシのやつ相手が ちがうだろうに。(唐傘連に) ・・・おまえたち、先に行きひそんでおれ |
戦場から帰ってくるのを見て | ||
473 | 町の女 | みえた!帰って来たよー |
474 | 石火矢衆 | おかしら |
475 | ジコ坊 | 苦労(くろう)をかけるな そろそろ動く。みなにもそう伝えよ |
476 | 石火矢衆 | はっ |
エボシに近づく、ジコ坊 | ||
477 | ジコ坊 | 師匠連(ししょうれん)から矢(や)の催促だ 田舎侍とあそんどるときではないぞ |
478 | エボシ | アサノ公方(くぼう)が地侍(じざむらい)どもをそそ のかしてるのだ |
479 | ジコ坊 | アサノか・・・大侍だな |
480 | エボシ | 鉄を半分よこせと言ってきた |
481 | ジコ坊 | そりゃあごうつくだ だがいまは人間とやりあうヒマはない 森に猪神があつまっておる ・・・じきに来るぞ!この際、鉄など 全部くれてやれ。師匠連への約束を はたしてから戦さでもなんでも やればよかろう |
482 | 町の女 | エボシさまーお早くー侍が来ます。早くー |
483 | ジコ坊 | うわさをすれば ・・・あれはアサノの使者だな |
484 | エボシ | 使者だ。 丁重(ていちょう)にもてなしなさい! |
485 | 町の女たち | ハーイ! |
486 | ジコ坊 | (ジコ坊が入った途端に閉まる門) おい、会わんのか!? |
487 | 使者 | (門の前で) タタラバのエボシとやら、 さきほどの地侍あいての戦さみごとなり! われらは公方さまの使者としてまいった。 かいこまって門をひらけい! |
488 | トキ | フン。用があるならそこで言いな! この山はエボシさまがもののけから 切りとったんだ。金になるとわかって 手のばしやがって!とっとと帰れ! |
489 | 使者 | 女ども使者への無礼ゆるさんぞ! |
490 | 町の女1 | 無礼だってさ。こっちは生まれたときから ズーッと無礼だい |
491 | 町の女2 | 鉄がほしけりゃくれてやるよ! (使者に向かって発砲する) |
492 | 使者 | ! |
逃げる使者 | ||
493 | 町の女たち | アハハハハハッ |
茶屋で話しをしているジコ坊とエボシ | ||
494 | ジコ坊 | いやぁまいった。まいった。大侍も もののけも眼中になしか。エボシタタラの 女たちのいさましいことよ |
495 | エボシ | こんな紙きれが役に立つのか? |
496 | ジコ坊 | まあいろんな輩(やから)を あつめるにはききめがある! |
497 | エボシ | けものとはいえなにしろ。神を殺すのだ |
町の女を呼ぶエボシ | ||
498 | 町の女1 | はい、エボシさま |
499 | エボシ | (書状を見せ) そなたたち、この書きつけがわかるか? |
書状を見てもピンと来ない町の女 | ||
500 | エボシ | 天朝さまのだ |
501 | 町の女2 | 天朝さまって? |
502 | エボシ | みかどだ |
503 | 町の女1 | みかど・・・? |
504 | ジコ坊 | (町の女の様子をみて) いやぁまいった。まいった |
505 | エボシ | いいよ・・・ |
506 | 町の女2 | はい |
507 | エボシ | わたしたちがここで鉄を つくりつづければ森の力は弱まる。 それからのほうが犠牲も少なくすむが・・・ |
508 | ジコ坊 | 金も時間もじゅうぶんにつぎこんだ 石火矢衆四十名をかしあたえたのは 鉄をつくるためではないぞ・・・ とまあ師匠連は言うだろうなあ |
509 | エボシ | まさかそなたまでシシ神の生首に 不死不老の力があると思ってはいまいな |
510 | ジコ坊 | やんごとなき方々や師匠連の考えは ワシにはわからん ・・・わからんほうがいい |
511 | エボシ | (立ち上がり) 約束は守る。モロ一族のかわりに 猪の群れが森にひしめくなら かえってやりやすかろう。 崖の裏にひそんでいるあやしげな 手下どもをよびよせるがいい |
512 | ジコ坊 | いやぁハハハ・・・ばれてたか。 あっ、そうだ!もうひとつ |
エボシ去ろうとする | ||
513 | ジコ坊 | 少年がひとりたずねて来なかったか? アカシシに乗ったふしぎな少年だが・・・ |
514 | エボシ | 去った・・・ |
場内に入る唐笠連やジバシリ達 | ||
515 | 町の女1 | (ジバシリや唐笠連を見て) なんか気味が悪いよ |
516 | 甲六 | ありゃあただの狩人じゃねぇジバシリだ |
517 | 町の人1 | ジバシリ・・・? |
エボシ邸にて集まる町の女たち | ||
518 | 町の女2 | わたしたちもおともさせてください! |
519 | 町の女3 | あんな連中を信用しちゃダメです! |
520 | 町の女1 | エボシさまになんかあったらとりかえしが つかないもの |
521 | 町の女2 | せっかく石火矢をおぼえたんだから・・・ |
522 | エボシ | だからこそみんなにここを 守ってもらいたいのさ。こわいのは もののけより人間のほうだからね。 シシ神殺しがすんだらいろいろ わかるだろうよ。唐傘連の師匠たちが シシ神の首だけでここから手を ひくもんかね・・・侍だけじゃないよ。 石火矢衆が敵となるかもしれないんだ。 男はたよりにできない。 しっかりやりな、みんな |
町の女一同、首を縦に振る | ||
523 | ゴンザ | エボシさまのことは案ずるな! このゴンザ、かならずお守りする |
524 | トキ | それがホントならねぇ・・・ |
525 | ゴンザ | なにい! |
526 | トキ | あんたも女だったらよかったのさ。 んべ〜〜ッ |
527 | ゴンザ | う・・・ |
528 | エボシ | ハハハハハハハ・・・ |
529 | トキ | くくっ |
夜 洞窟内 |
||
530 | アシタカ | くっ・・・(目が覚める) |
531 | サン | ・・・(アシタカの横で眠っている) |
532 | アシタカ | ! |
533 | アシタカ | ぐっ(起き上がる) |
外に出るアシタカ | ||
534 | アシタカ | (森をみて) ・・・ |
535 | モロ | (上からアシタカを見下しながら) つらいか・・・ そこからとびおりれば簡単に けりがつくぞ。 体力が戻ればアザもあばれだす |
536 | アシタカ | (モロに向かって) わたしは何日もねむっていたようだな。 夢うつつにあの子に世話になったのを おぼえている |
537 | モロ | おまえがひと声(こえ)でもうめき声を あげればかみ殺してやったものを・・・ 惜しいことをした |
538 | アシタカ | 美しい森だ。 乙事主はまだ動いていないのか・・・ |
539 | モロ | 穴にもどれ小僧!おまえには聞こえまい。 猪どもに喰い荒される森の悲鳴が ・・・わたしはここでくちていく身体と 森の悲鳴に耳をかたむけながら あの女を待っている。 ・・・あいつの頭をかみくだく瞬間を 夢見ながら・・・ |
540 | アシタカ | モロ・・・森と人間が争(あらそ)わずに すむ道はないのか? ほんとにもうとめられないのか? |
541 | モロ | 人間どもがあつまっている きゃつらの火がじきにここにとどくだろう |
542 | アシタカ | サンをどうする気だ。 あの子も道づれにするつもりか!? |
543 | モロ | いかにも人間らしい 手前勝手(てまえがって)な考えだな。 サンはわが一族の娘だ。 森と生き森が死ぬときはともにほろびる |
544 | アシタカ | あの子を解きはなて! あの子は人間だぞ! |
545 | モロ | だまれ、小僧!おまえにあの娘の不幸が いやせるのか。森をおかした人間が わが牙をのがれるために なげてよこした赤子がサンだ・・・! 人間にもなれず山犬にもなりきれぬ 哀れで醜い可愛い我が娘だ! おまえにサンをすくえるか!? |
546 | アシタカ | わからぬ・・・ だが共に生きることはできる! |
547 | モロ | ファッファッどうやって生きるのだ。 サンと共に人間と戦うというのか |
548 | アシタカ | ちがう!それでは憎しみをふやすだけだ |
549 | モロ | 小僧・・・もうおまえにできることは なにもない。おまえはじきにアザに 喰い殺される身だ。 夜明けとともにここを立ち去れ! |
洞窟内に戻るアシタカ | ||
550 | サン | ・・・歩けたか?(横になりながら) |
551 | アシタカ | ありがとう。サンとシシ神さまのおかげだ |
552 | サン | ・・・(また、眠る) |
朝 洞窟から出たアシタカ ヤックルが木に繋がれている |
||
553 | アシタカ | ヤックル!心配かけたな。 |
高いところから飛び降りる 着地したと同時に転ぶ |
||
554 | アシタカ | う・・・!? 痛・・・足がすっかりなまってしまった |
アシタカヤックルに乗り 山犬に連れられて森を抜ける |
||
555 | アシタカ | 静かすぎる。コダマたちもいない・・・ |
岩場についたアシタカ | ||
556 | アシタカ | タタラ場のにおいがかすかに風に まじっている。案内ごくろう! ひとつたのみがある・・・ サンにこれをわたしてくれ! (山犬に向かってお守りを投げる) (ヤックルに向かって) いこう・・・ |
557 | サン | ひどいにおい・・・鼻がもげそう |
558 | モロ | ただの煙じゃない。わたしたちの鼻を きかなくしようとしているのさ |
559 | サン | ・・・あの女がいる! こっちに気づいている・・・ |
560 | モロ | みえすいた罠をはったものだ |
561 | サン | わな・・・? |
562 | モロ | 猪どもをいきりたたせて森から おびきだそうとしているのだよ。 よほどのしかけがあるのだろう |
563 | サン | おしえなきゃ!猪たちは動きはじめてる。 みんなやられてしまう |
564 | モロ | 乙事主とてばかではない・・・ すべてわかっていても猪たちは正面から 攻撃したいのさ・・・ 最後の一頭になっても 突進してふみ破る! |
エボシ陣営木を切り倒している | ||
565 | サン | 木をきりはじめた・・・ |
566 | モロ | あれもさそいだ |
567 | サン | (サン、モロに抱きつき) かあさん、ここでお別れです。 わたし乙事主さまの目になりにいきます。 あの煙にこまっているはずだから。 |
568 | モロ | それでいいよ・・・ おまえにはあの若者と生きる道も あるのだが・・・ |
569 | サン | 人間はきらい! |
アシタカと会ってきた山犬と合流する アシタカからもらったお守りを サンに渡す |
||
570 | サン | アシタカがわたしに・・・ (お守りを見て)綺麗 |
571 | モロ | おまえたちはサンとおいき! わたしはシシ神のそばにいよう |
572 | サン | いこう! |
山犬にまたがるサン 猪と合流 |
||
573 | サン | モロ一族もともにたたかう! 乙事主さまはどこか!? |
574 | 猪 | ぶひー!! |
575 | サン | ありがとう! |
雨が降ってくる ヤックルにまたがり進むアシタカ 銃声を聞きつける |
||
576 | アシタカ | タタラ場からだ!いこう! |
侍が数名、川のほとりにいる | ||
577 | 侍1 | 何者かぁ!? |
578 | アシタカ | 侍だ! |
579 | 侍1 | とまれェ! |
580 | アシタカ | おしとおる! |
581 | 侍1 | こいやァ! |
ヤックル侍に向かって走る 侍が薙ぐとジャンプをしてかわす そのまま、川へ入る |
||
582 | 侍1 | ! |
583 | 侍2 | こりゃあたまげた! |
侍たちが矢を撃つ 刀で落とすアシタカ |
||
584 | 侍1 | とめたぞ!やるのォ! |
585 | 侍2 | 矢のむだだ!やめとけ! |
川からタタラ場に近づく | ||
586 | 町の女1 | (アシタカを見つけて) 早く早く! |
587 | トキ | ほんとだ。あの人だよ |
588 | 町の女2 | 幽霊じゃないよね? |
589 | トキ | アシタカさまーっ! |
590 | アシタカ | おトキさんかー!みんな無事かー!? |
591 | トキ | 見てのとおりさ男たちの留守を ねらって侍どもがおしよせてきやがった! |
592 | 町の女3 | 下はやられちまった |
593 | トキ | 女ばかりとあまく見やがって |
594 | アシタカ | (上陸して) ・・・エボシ殿は? |
595 | トキ | 動ける男はみんなつれて シシ神退治にいっちまってる。 囲まれては知らせようがなくてさ |
596 | アシタカ | シシ神退治・・・やはりさっきの音は・・・ |
597 | 甲六 | (弓と矢を投げる) ダンナーあずかってましたぜーっ! |
598 | トキ | なんで鞍とミノも持ってこなかったのさ! |
599 | 甲六 | だって・・・ |
600 | トキ | この役立たず! |
601 | アシタカ | 甲六、ありがとう!(弓の弦を張る) エボシ殿をよびにいく! それまでもつか・・・!? |
602 | トキ | いざとなったらとけた鉄を ぶっかけてやるさ! |
603 | 町の女1 | アシタカさま、おねがいします! エボシさまにはやく! |
川にいる侍に砲撃する石火矢衆 | ||
604 | 町の男1 | はぁーはずしたか・・・ |
605 | 町の男2 | 船が来ますぞ、おはやく! エボシさまおたのみます! わたしらも戦いますゆえ! |
606 | アシタカ | (ヤックルに乗って) かならずもどる! |
607 | トキ | たのむよーっ! |
608 | 町の女2 | お気をつけて・・・ |
609 | 甲六 | (顔の前に矢が飛んで来て) ! |
610 | 侍1 | でたぞーッいっきーー |
侍が警報用の弓矢を放つ | ||
611 | アシタカ | 追手(おって)がかかった! たのむぞ、ヤックル! |
騎馬四騎に追われる | ||
焼けただれている何かを発見する | ||
612 | アシタカ | 生きものの焼けるにおいだ・・・ |
ヤックル矢に討たれる アシタカ転げ落ちる |
||
613 | アシタカ | (ヤックルに駆け寄り) ヤックル! |
騎馬2騎が迫り来る | ||
614 | 侍1 | こいやぁー |
アシタカがヤックルの身で矢を抜いてる | ||
615 | 侍1 | うおおおおおおお! |
アシタカ、矢を放つが鉄の鎧に 矢が阻まれる |
||
616 | アシタカ | ! |
アシタカ剣を抜く | ||
617 | 侍1 | おらららららー! |
アシタカのアザが大きくなる 侍が斬りかかったと同時に 侍の両腕が宙に浮く |
||
618 | 侍1 | ! |
侍が矢を放つ。それを素手で掴み 打ち返して侍を倒す |
||
619 | アシタカ | 来るな! |
騎馬2騎が刀を抜き、遠くから迫る アシタカが矢を放つ 一騎の首が飛ぶ もう一騎は逃げていく |
||
620 | アシタカ | ヤックル、傷を見せろ!すまないここで まっててくれ!かならずもどる。 |
付いてくるヤックル | ||
621 | アシタカ | だめだ、まってろ! |
ヤックルと一緒に行く | ||
622 | アシタカ | がんばれもうすこしだ |
猪たちの死骸の中を進むアシタカ その先で牛飼いの死体を見つける そこにいた牛飼いに話しかけようとする |
||
623 | 兵士1 | 何者か!? |
624 | 兵士2 | ここは修羅の庭。 よそ者はすぐ立ち去れい! |
625 | アシタカ | この死者たちの世話になった者だ。 いそぎ伝えたいことがある。 エボシ殿に会いたい |
626 | 兵士1 | エボシはここにはいない。 伝えよう、用むきを話せ! |
627 | アシタカ | 本人に話す。エボシ殿はどこか!? |
628 | 町の男1 | だんなー!生きとったんですか! |
629 | アシタカ | むごいことになったな。 |
630 | 町の男2 | まだ何人もうまってるんでさ |
631 | 町の男3 | ひでえなんてもんじゃねぇ |
632 | アシタカ | タタラ場が侍におそわれた |
633 | 町の男1 | ええっ!? |
634 | アシタカ | 女たちが上の曲輪(くるわ)にたてこもって 頑張っている。いまならまだ、間にあう |
635 | 町の男2 | えれぇことになった・・・ |
636 | 町の男3 | アサノのやつらだ・・・ 留守をねらいやがった |
637 | アシタカ | エボシ殿はここにはいないのか!? |
638 | 町の男1 | へぇ・・・シシ神殺しに森へ・・・ |
639 | アシタカ | すぐ呼び戻せ!間にあわなくなるぞ |
640 | 兵士1 | 用むきがすんだら即刻(そっこく)たち去れ |
641 | 兵士2 | みな仕事にもどれ! |
兵士に詰め寄る町の男 | ||
642 | 町の男2 | おい、ほっとく気かよ! |
643 | 町の男3 | ちょっと待ってくだせえ |
644 | 町の男1 | あいつらタタラ場を見殺しにする気だぞ |
645 | 町の男2 | 帰りを待ってたりしちゃ 手おくれになっちまう |
646 | 町の男3 | すぐ使いをだせ! |
647 | 兵士1 | 森はひろくて深い。 使いのだしようがないのだ |
648 | 町の男1 | ウンをつくなよ! |
649 | 町の男2 | のろしでもなんでも あんたちの得意だろうが! |
650 | 町の男3 | エボシさまはやつらにおどらされてるんだ |
651 | アシタカ | 攻めよせた猪の中に 山犬はいなかったか? |
652 | 町の男1 | えっ? |
653 | アシタカ | サン・・・いやもののけ姫は? |
654 | 町の男2 | さぁわからねぇ・・・ まっくろになっておしよせてきたから・・・ |
655 | 町の男4 | いました・・・お・・・おれたちが いちばん前にいたから・・・ |
656 | アシタカ | それで・・・ |
657 | 町の男4 | わからねぇ!とつぜんなんにも わからなくなっちまって・・・ 唐傘のやつら、おれたちをエサに猪を おびきよせ・・・地面ごと ふっとばしやがったんでさ。 上からも地雷火をなげやがった・・・ |
658 | 町の男3 | 唐笠のやつら俺たちをエサに 猪たちをおびき寄せ、地面ごと ふっとばしちまいやがったんでさ |
659 | アシタカ | はっ |
660 | 山犬 | (猪の死体から出てくる山犬) ガウヴウ〜ッ |
661 | アシタカ | (何かに気づく) ・・・! |
662 | 町の男1 | んん・・・? |
猪の死体から這い出そうとしている 山犬をみつける |
||
663 | アシタカ | サンはどうした!?くっ・・・ |
664 | 山犬 | グルルル・・・ |
665 | アシタカ | おちつけ!おまえを助けたい |
666 | 町の男2 | 山犬だ!山犬が生きてるぞーっ! だ・・・だんな・・・なにを・・・ |
667 | アシタカ | ウウーッ |
668 | 町の男3 | だんな! |
669 | 兵士1 | どけい!小僧・・・なにをしている!? |
670 | アシタカ | この者に案内をたのむのだ。 わたしがエボシを呼びにいく! |
671 | 兵士2 | さては魔性のたぐいか!どけッ! |
672 | アシタカ | シシ神の首とタタラ場と どちらがたいせつなのだ!? |
兵士、吹き矢でアシタカを狙う | ||
673 | 町の男1 | 毒針だ! |
674 | アシタカ | (毒針をかわしたが猪の重みで潰れる) あっ! |
675 | 町の男2 | や・・・やめろ! |
再度、アシタカを狙う兵士 町の男が兵士の頭をくわで叩きつける |
||
676 | 兵士1 | ! |
町の男達、山犬を助け出そうとする | ||
677 | 町の男3 | みんな力をだせ!テコをつかえ! |
678 | 町の男達 | せいや!せいや!せいや!せいや! |
679 | 町の男1 | (山犬が脱出したのをみて) でたぞーっ! |
680 | アシタカ | みんなは沢(さわ)をくだって 湖の近くにかくれていてくれ! |
681 | 町の男達 | へい! |
682 | 町の男2 | お気をつけて・・・ 石火矢衆もやつらの仲間です |
683 | アシタカ | あずかってくれ! 最後の矢が折れてしまった |
684 | アシタカ | おまえはみんなといきな。 ヤックルをたのむ! |
山犬と共に走るアシタカ | ||
685 | アシタカ | サンのところへ!そこにエボシもいる |
森のなか | ||
686 | ジコ坊 | ジバシリどもにおくれるな。 今日こそけりをつけるのだ |
687 | 狩人 | ジコ坊さま |
688 | ジコ坊 | オッ。様子はどうだった? |
689 | 狩人 | 深手をおった乙事主はもののけ姫と さらに森の奥(おく)へ向かっております |
690 | ジコ坊 | やはりシシ神に助けをもとめる気だ。 ぴったりはりつけよ! 人と見やぶられてはシシ神は でてこぬぞ |
691 | 狩人 | 言われるまでもねぇ・・・ |
ジバシリ去る | ||
692 | エボシ | やつの顔にぬったのは猪の血か? |
693 | ジコ坊 | へへ・・・ジバシリのわざだ。 おぞましいものよ |
深手を負った乙事主 森の中をサンと一緒にいる |
||
694 | サン | がんばって! もうじきシシ神さまのお池だから |
足を滑らせ、倒れる乙事主 | ||
695 | サン | (乙事主を支えれず、飛ばされる) ああっ! |
岩に身体を打ち付けるサン | ||
696 | サン | なにかくる! |
697 | サン | 乙事主さまようすが おかしいの・・・ |
698 | 乙事主 | ・・・ |
699 | サン | もうちょっとだからがんばって! |
700 | 山犬 | とてもいやなものがくる |
701 | サン | なんだろう?血のにおいで鼻がきかない |
木の枝を投げつける猩々たち | ||
702 | サン | 猩猩たち・・・ |
703 | 猩々 | おまえたちのせいだ。 おまえたちのせいでこの森おわりだ |
704 | サン | なにをいう!森のために戦った者への これが猩猩の礼義(れいぎ)か! |
705 | 猩々 | おまえたち破滅つれてきた! 生きものでも人間でもない者つれてきた! |
706 | サン | 生きものでも人間でもないもの・・・? |
707 | 猩々 | きたーっ!森のおわりだ! |
708 | サン | ! |
709 | 山犬 | ヴヴ〜ッ |
猪の皮をかぶったジバシリ登場 | ||
710 | サン | 戦士たちが・・・ |
711 | 乙事主 | (猪の匂いを嗅いで) もどってきた! |
712 | サン | ハッ |
713 | 乙事主 | もどってきた! 黄泉の国から戦士たちが帰ってきた 続け!戦士たち!シシ神の所へいこー! |
走り出す乙事主 それに続くジバシリ達 |
||
714 | サン | 乙事主様落ち着いて! 死者は蘇ったりしない (ジバシリをみて) 戦士の生皮をかぶって匂いを 消しているんだ。中は人間だ (乙事主に) 止まって!奴らシシ神様のところに 案内させるつもりなんだ! |
岩を粉砕し、直進する乙事主 | ||
715 | 乙事主 | シシ神よいでよ! なんじ守りの神なら 我一族を蘇らせい! 人間を滅ぼせ! |
716 | サン | 乙事主様!こころを鎮めて! |
717 | 山犬 | 囲まれるぞ!そいつはもうダメだ! 捨ててこう! |
718 | サン | ダメ!今、見捨てたらタタリ神に なってしまう おまえは母さんにこのことを知らせて! 人間の狙いはシシ神さまだ。 母さんが生きていれば知恵をかしてくれる |
迫るジバシリ達 | ||
719 | サン | おいき!山犬の血を とだえさせてはだめ! (山犬サンに近づき)いい子・・・ |
山犬はモロのところへ 道の途中で倒れる乙事主 |
||
720 | サン | 最初の者を殺す!森じゅうに おまえたちの正体を知らせてやる! |
アシタカと共にいる山犬が 遠吠えをしている |
||
721 | 山犬 | オオオオオーン |
722 | サン | ・・・アシタカが・・・ |
723 | 乙事主 | (ジバシリ達が近づくと) ブギイイ! |
槍を振るい、乙事主から遠ざけるサン | ||
724 | サン | おのれ! |
725 | 乙事主 | あついぞ!からだが火のようだ・・・ |
乙事主から蛭のようなものがでてくる | ||
726 | サン | (蛭のようなものを取り払いながら) あっ!ダメーッ!乙事主さまタタリ神 なんかにならないで! 乙事主さま・・・! (ジバシリが打ったつぶてが サンの後頭部を直撃する) アッ! |
727 | アシタカ | (もう一匹の山犬の遠吠えを聞いて) こたえた!わかるか? |
728 | 山犬 | サンがあぶない! |
729 | アシタカ | いこう! |
山の上から飛び降りるアシタカ | ||
730 | サン | (タタリ神になった乙事主の中で) ウ・・・!・・・!あつい・・・ アァッ!いやだ・・・ タタリ神になんかなりたくない! 乙事主さま! |
山を猛スピードで駆け下りるアシタカ | ||
731 | 山犬 | 遅い!のれっ! |
山犬に乗るアシタカ | ||
732 | アシタカ | あっ! |
石火矢衆や唐笠連をなぎ倒す山犬 | ||
733 | 石火矢衆1 | 山犬だーッ! |
734 | 石火矢衆2 | ワァッ! |
735 | 石火矢衆1 | ! |
736 | アシタカ | (エボシをみつけ) エボシ! |
737 | ジコ坊 | おおッ |
738 | アシタカ | くそっ!先にいけ! |
山犬に先を行かせ、アシタカはエボシと 対峙する |
||
739 | アシタカ | エボし、話を聞けーッ! |
740 | エボシ | アシタカかァーっ!? |
741 | アシタカ | タタラ場が侍におそわれている。 シシ神殺しをやめてすぐもどれ! 女たちが戦っている。 男たちも山をくだった。 みなそなたの帰りを待っている |
742 | エボシ | その話信ずる証拠(しょうこ)は? |
743 | アシタカ | ない!できるならタタラ場に とどまり戦いたかった |
744 | エボシ | シシ神殺しをやめて 侍殺しをやれと言うのか |
745 | アシタカ | ちがう!森と タタラ場双方生きる道はないのか!? |
山犬の後を追うアシタカ | ||
746 | ジコ坊 | あいつ・・・どっちの味方なのだ? |
747 | ゴンザ | エボシさま、もどりましょう |
748 | エボシ | 女たちにはできるだけの 備えをさせてある。自分の身は自分で 守れと・・・池だ!シシ神は近いぞ |
749 | ジコ坊 | いよいよ正念場だ。油断するな。 |
750 | 唐笠連 | あの女いなくとも・・・ |
751 | ジコ坊 | 神殺しはこわいぞ。 あいつにやってもらわにゃ・・・ |
池 | ||
752 | アシタカ | ハァ・・・ハァ・・・ |
モロを見つけ、駆け寄るアシタカ | ||
753 | アシタカ | モロっ死んだのか・・・ サン、どこだー!サーン! |
乙事主のタタリのなか | ||
754 | サン | アシタカ! |
755 | アシタカ | ・・・! |
タタリ神になった乙事主とジバシリ 池に到着する |
||
756 | アシタカ | 乙事主・・・ |
757 | シバシリ | 去れ、ワッパ! |
758 | アシタカ | ここで争(あらそ)うとシシ神はでてこぬぞ。 (乙事主の前に立ち) 乙事主よ、しずまりたまえ! 乙事主、山犬の姫をかえしてくれ。 サンはどこだ。サン!きこえるか。 わたしだ!アシタカだ! |
759 | 乙事主 | プギャァァァァァア! |
760 | アシタカ | (サンの足らしきものを見つける) サン!くっ! |
761 | 狩人1 | (乙事主のタタリが付いて) ワァッ |
762 | 狩人2 | あいつをしずめろ! |
ジバシリたちは一斉にアシタカに 向かって吹き矢を放つ アシタカはしゃがんでかわす |
||
763 | 狩人たち | 殺せ!やつを射殺せ! |
山犬達がジバシリ達に噛み付く | ||
764 | 山犬たち | ガウウガウガウ |
765 | 狩人たち | うわっ〜 |
アシタカ、乙事主に飛び移り サンを探す |
||
766 | アシタカ | サン! |
767 | サン | アシタカ! |
乙事主に振り落とされたアシタカ モロにぶつかり、池の中に |
||
768 | モロ | やれやれ、あの女のために のこしておいた最後の力なのに |
769 | 狩人たち | (退却しながら) 結界をはれ! |
唐笠連煙幕を張る モロと乙事主対峙 |
||
770 | 山犬 | おまえたち手出しをするんじゃないよ。 タタリなんぞもらうもんじゃない |
771 | 乙事主 | ぐぇー! |
飛び散るタタリ | ||
772 | 山犬 | もう言葉までなくしたか・・・ |
木の影からみているジコ坊とエボシ | ||
773 | ジコ坊 | よくやった。もういいぞ。 けが人の手当(てあて)をしてやれ。 いやいやおそろしいながめよ。 (シシ神をみて) でた・・・ |
乙事主、モロに突進していく | ||
774 | モロ | わたしの娘をかえせ! |
タタリの中からサンを救い出すモロ | ||
775 | モロ | アシタカ!おまえにサンが救えるか!? |
池の中から出てくるアシタカ | ||
エボシが放った石火矢に貫かれるシシ神 | ||
776 | アシタカ | ハッ・・・エボシ!うつな! |
一時動くを止めるもまた、歩き出す | ||
777 | アシタカ | ああ?!エボシ!そなたの敵は 他にいるはずだ! |
778 | ジコ坊 | 石火矢が効かぬ・・・ |
779 | エボシ | 首をとばさねばだめか・・・ |
アシタカ、モロに駆け寄りサンを 抱きかかえる |
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780 | アシタカ | (サンを抱きかかえながら池の中に) サン!死ぬなァ! |
シシ神、乙事主の命を吸い取り 乙事主倒れる また、モロも倒れる |
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781 | ジコ坊 | なんとシシ神は生命を吸いとるのか・・・ (シシ神が変身するのをみて) むっ!?いかんディダラボッチになるぞ! |
782 | エボシ | みなよく見とどけよ!神殺しが いかなるものなのか。 シシ神は死をもつかさどる神だ! おびえておくれをとるな |
エボシ、ディダラボッチに近寄る | ||
783 | アシタカ | ・・・!?やめろお! |
アシタカが投げた剣は エボシの石火矢に刺さる |
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784 | アシタカ | エボシ! |
シシ神がエボシをみると石火矢から 草が生え出す |
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785 | エボシ | クソッ、化け物め! |
草を払い、石火矢を撃つ それがシシ神の首に当たり シシ神の首が落ちる |
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786 | アシタカ | くっ! |
787 | ジコ坊 | やったぁ!首おけを用意しとけ! |
788 | サン | ぐっ |
789 | アシタカとサ ン |
・・・ |
シシ神は黒い液状の状態になり、 はじけ飛ぶ |
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790 | ジコ坊 | わぁ! |
791 | 石火矢衆 | ぐわ〜 |
792 | 兵士1 | うっ |
シシ神に触れたものは皆、死ぬ シシ神は横だけでなく、上にも 飛び散り、ことごとく命を吸い取る |
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793 | エボシ | ジコ坊、首おけをもってこい! |
794 | ジコ坊 | かつぎ手がやられた!はやくはやく |
795 | エボシ | シシ神の体にふれるな! 生命を吸いとられるぞ!受けとれ! 約束の首だ!(ジコ坊に投げる) |
796 | ジコ坊 | おおっとっと! |
シシ神の間からモロの首だけがでてくる | ||
797 | モロ | ばくっ!(エボシの右腕を食いちぎる) |
798 | ゴンザ | (エボシにかけより) エボシさま! |
799 | エボシ | モロめ!首だけで動きよった・・・ |
800 | ジコ坊 | やばいぞ、いそげー |
801 | 兵士2 | ジコ坊さま! |
ジコ坊を追ってくるシシ神 | ||
802 | ジコ坊 | 逃げろ! |
池の中から出てくるアシタカ | ||
803 | アシタカ | 島へ逃げろ! |
804 | ゴンザ | わしはおよげんのだ! |
805 | アシタカ | 水の底を歩ける |
エボシを抱きかかえ、泳ぎアシタカ その後を歩いて付いてくるゴンザ |
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島についた三人 アシタカからもらったお守りを引きちぎる |
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806 | サン | そいつをよこせ!やつ裂きにしてやる |
807 | アシタカ | モロが仇をうった。もう罰はうけている。 手を貸せ |
808 | ゴンザ | エボシさま |
809 | エボシ | よけいな情けは・・・ |
810 | アシタカ | おトキさんたちにつれて帰ると約束した |
811 | アシタカ | (シシ神をみて) 首をさがしている・・・ここもあぶない、 サン。力をかしてくれ |
812 | サン | いやだ!おまえも人間の味方だ! その女をつれてさっさといっちまえ! |
813 | アシタカ | サン・・・ |
814 | サン | くるな!人間なんか大キライだ! |
815 | アシタカ | わたしは人間だ。そなたも・・・人間だ |
816 | サン | だまれェ!わたしは山犬だ! |
817 | アシタカ | サン |
818 | サン | よるな! |
アシタカの胸にお守りを突き立てる そのままサンを抱きしめるアシタカ |
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819 | アシタカ | すまない。 なんとかとめようとしたんだが・・・ |
820 | サン | もう終わりだ。なにもかも。森は死んだ・・・ |
821 | アシタカ | まだ終わらない。わたしたちが 生きているのだから。力をかしておくれ |
ディダラボッチは巨大化して森全体に 広がる |
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822 | 兵士 | まて〜手伝え! |
823 | ジコ坊 | どいつもこいつもまったく・・・ いかんいかん!・・・!首が動いとる・・・ |
迫り来るシシ神 | ||
824 | ジコ坊 | こいつが呼んどるんだ! |
タタラ場 | ||
825 | 町の人1 | とれたよ、トキ |
826 | トキ | ありがとう |
827 | 町の人1 | やけに静(しず)かだね。 |
828 | トキ | 夜明けをまつつもりだ |
829 | 町の人1 | あの若者はエボシさまに 知らせてくれただろうか? |
830 | トキ | アシタカさまはきっとやってくれるよ。 もうそのへんに来てるかもしれないよ。 (甲六の顔をみて) あーあ、だらしない顔しちまって おい!甲六! |
831 | 町の人1 | いまのうちさ寝かしといてやりなよ |
832 | トキ | なんだろう気味が悪いね |
山からディダラボッチが舐めるように 流れてくる |
||
トキ | ディダラボッチだ! | |
逃げる侍たち | ||
834 | 侍 | ひけェ、馬をひけぇ。こらー乱(みだ)れるな |
835 | トキ | 持ち場をはなれるんじゃないよ |
836 | 町の女1 | どうしよう。こっちへ来るよ |
837 | 甲六 | だめだ。逃げよう |
838 | トキ | タタラ場を守るんだ。 エボシさまと約束したんだから・・・ |
839 | 町の女1 | あの人だ! |
840 | 町の女2 | アシタカさまだ! |
山犬に乗ってアシタカ、サンタタラ場まで やってくる |
||
841 | アシタカ | みんな逃げろー シシ神が首をとりもどそうと 追ってきたんだ。あのドロドロにさわると 死ぬぞ!水の中へいけ。ドロドロが 遅くなる。男たちとエボシは 対岸(たいがん)をこっちへ向かっている。 私たちは首をとりもどしてシシ神に返す |
842 | サン | アシタカ! |
843 | アシタカ | いそげ! |
844 | トキ | さわぐんじゃない! |
845 | 町の女1 | トキ、逃げよう |
846 | トキ | みんなを湖へ! |
847 | 町の女2 | はい! |
848 | トキ | 落ちついてケガ人や病人に 手を貸すんだよ |
逃げようとする町の人たち | ||
849 | トキ | (山へ逃げようとするひと達に) そっちへいっちゃだめだよ |
850 | 甲六 | ああ・・・大屋根が・・・ |
燃えるタタラ場 | ||
851 | 甲六 | もうだめだ!タタラ場が 燃えちまったらなにもかもおしまいだ |
852 | トキ | 生きてりゃなんとかなる! もっと深い所へ!はやく! |
山犬に乗って、ジコ坊たちを探す二人 | ||
853 | サン | いた、あそこ! |
854 | サン | (山犬から降り) おいき! |
ジコ坊に立ちはだかるアシタカ | ||
855 | アシタカ | その首、まてェ! |
856 | ジコ坊 | おぬしも生きとったかよかった |
857 | アシタカ | 首をシシ神にかえします。 置いてはやく逃げなさい |
858 | ジコ坊 | バカを言うな いまさらとりかえしはつかん。 陽が出ればすべて終わる 見ろ・・・ 生命を吸ってふくらみすぎた のろまな死神だ。 陽にあたればやつは消えちまう |
859 | 兵士 | ジコ坊さま、追いつかれます、早く・・・ |
860 | ジコ坊 | 天地(あまつち)の間に あるすべてのものを 欲するは人の業というものだ・・・ |
861 | アシタカ | あなたを殺したくはない! |
862 | ジコ坊 | いやぁ、まいったなァ。 そうこわい顔を・・・するな! (突然、蹴りあげる) |
863 | アシタカ | くっ |
864 | 兵士 | は!(サンに向かってナイフを繰り出す) |
865 | ジコ坊 | 走れ! |
ジコ坊の声と共に走り出す兵士 サンは唐笠連を倒し、兵士を追う 兵士、シシ神に道を阻まれ 首おけを捨てて逃亡 それを追うサン |
||
866 | サン | アシタカ! |
867 | ジコ坊 | おうっ |
首おけを受け止めるも受け止めきれず 首おけと一緒に転がっていく 岩にぶつかり、その上に首おけが乗る |
||
868 | ジコ坊 | 囲まれたぁ〜ああ〜いかん 朝陽よ、いでよぉ |
869 | アシタカ | おけを開けろ |
870 | ジコ坊 | わからんやつだな、もう手をくれた |
871 | サン | アシタカ、人間に話したって無駄だ! |
872 | アシタカ | 人の手でかえしたい |
873 | ジコ坊 | ええい!どうなっても知らんぞ (首おけをあける) |
首おけから溢れ出る緑の液体 | ||
874 | ジコ坊 | わっ! |
サンとアシタカ、シシ神の首を高々と 持ち上げる |
||
875 | アシタカ | シシ神よ 首をお返しする!静まりたまえ! |
876 | ジコ坊 | きよる!きよるぞ!! |
ゆっくりと首に近づくシシ神 首に触れると動かなくなる |
||
877 | 甲六 | 動かなくなったぞ・・・ |
878 | トキ | 男たちだ! |
879 | 町の女たち | エボシさまー |
880 | ゴンザ | ええい、さわぐな傷にさわる! |
朝日をあびるシシ神 そして、倒れる |
||
881 | 町の人たち | ああー・・・たおれる、たおれる |
地面に着くと爆発し 強風を起こす |
||
882 | 町の人たち | つかまれ!はなすな! |
強風のあとには辺り一面、草が茂る | ||
883 | 甲六 | すげぇ・・・ シシ神は花さかじじいだったんだぁ・・・ |
目を覚ますアシタカ | ||
884 | アシタカ | サン・・・サン。見てごらん |
サン目を覚ます | ||
885 | サン | (辺りを見回して) よみがえってもここは もうシシ神の森じゃない シシ神さまは死んでしまった |
886 | アシタカ | シシ神さまは死にはないよ。 生命そのものだから・・・ 生と死とふたつとも持っているもの・・・ わたしに生きろといってくれた (腕をみるとアザが薄くなっている) |
サン山犬に乗っている | ||
887 | サン | アシタカは好きだ。 でも人間をゆるすことはできない |
888 | アシタカ | それでもいい。サンは森で わたしはタタラ場で暮らそう。共に生きよう。 会いに行くよ。ヤックルに乗って |
場内 エボシと町の人たちが 集まっている |
||
889 | エボシ | ざまぁない。わたしが山犬の背で 運ばれ生きのこってしまった。 礼(れい)を言おう・・・ 誰かアシタカを迎えに行っておくれ。 みんなはじめからやり直しだ。 ここをいい村にしよう |
890 | ジコ坊 | いやぁーまいった、まいった。 バカには勝てん |