声劇台本 「もののけ姫}
1 アシタカ (一度ヤックルを降りて、石垣を登る)
ヤックル(と呼んで、再び乗る)
    道の先から女の子が3人やってくる
2 カヤ 兄(あに)さまーー
3 アシタカ ちょうど良かった。ヒイさまがみな村へ
戻れと。
4 女の子1 じいじもそう言うの
5 アシタカ じいじが!?
6 女の子2 山がおかしいって。
7 カヤ 鳥たちがいないの
8 女の子1 ケモノたちも・・・
9 アシタカ そうか。じいじの所へ行ってみよう。
みんなは早くもどりなさい
10 女の子たち ハイッ
    村へと戻る女の子たち
    見張り台
11 アシタカ なにか来る。
    見張り台上
12 アシタカ じいじなんだろう
13 じいじ わからぬ。人ではない
14 アシタカ 村のほうは、ヒイさまがみなを
呼びもどしている。
15 じいじ 来おった。
    弓を構えるアシタカ
16 アシタカ ・・・・・・・・・!?
    森の中から、体中に蛭のようなものを
這わした化け物が出てくる
17 じいじ タタリ神だ!
18 アシタカ タタリ神?!
19 タタリ神 ぐぇぇぇぇぇl!
    タタリ神に驚き、動けないヤックル
20 アシタカ ヤックル!逃げろ!
    ヤックルのそばに矢を射る
    正気を取り戻したヤックルは
その場を逃げる
21 じいじ うわっ!
22 アシタカ くっ
    アシタカは、じいじを抱え、
見張り台から飛び出す
    タタリ神は、見張り台を壊す
23 アシタカ 村の方へ行く!!おそう気だ!
24 じいじ アシタカ!タタリ神に手を出すな!
呪いをもらうぞ!!
    タタリ神の這っていった後を追う
25 アシタカ ヤックル!(口笛で呼ぶ)
    やってきたヤックルに飛び乗る
    タタリ神を追いつく
26 アシタカ 静まれ!鎮まりたまえ!
さぞかし名のある山の主と見うけたが
なぜ、そのようにあらぶるのか?
    タタリ神は止まらない
   
    女の子たちの前へと現れるタタリ神
27 女の子2 おばけっ
28 カヤ 村へ!
    タタリ神の前へと回りこむアシタカ
29 アシタカ 止まれェ!なぜ我が村をおそう!
やめろォー!しずまれーー
    逃げる女の子たち
30 女の子A (転ぶ)アッ!
31 カヤ しっかり!
    ナタを抜いて構える女の子B
32 アシタカ
    タタリ神の目に矢を射る
33 タタリ神 グエエエエエエ・・・
34 アシタカ 早く!
    タタリ神の蛭がアシタカの右腕をつかむ
35 アシタカ うっ!
    蛭を避けながら、
タタリ神の眉間に
矢を射った
36 アシタカ ク・・・・・・
    アシタカの右腕は黒く焼けている
    倒れるタタリ神
37 町の人たち たおした!
38 町の人たち オオーッ
39 町の人1 ヒイさまを早く!
40 町の人2 火をたやすな!
41 アシタカ (ヤックルの上で苦痛に耐える)くっ!
42 カヤ 兄さま!
43 アシタカ カヤふれるな。ただ傷のではない
44 町の人1 アシタカが手傷をおった!
45 町の人2 ヒイさまは?
46 ヒイさま (男に担がれやってくる)みな!それ以上近づい
てはならぬぞ!
47 カヤ ヒイさま!
48 ヒイさま この水をゆっくりかけでおやり
49 カヤ ハイ
    大きなひょうたんに入った水を、
アシタカの傷にかける
50 アシタカ ツ・・・・・・
    倒れたタタリ神へ近づくヒイさま
51 ヒイさま いずこよりいましあらぶる神とは
存ぜぬも。かしこみかしこみ申す。
この地に塚を築き、あなたの
御霊(みたま)をお祭りします。うらみを
忘れ、しずまりたまえ(拝む)
52 タタリ神 けがらわしい人間どもよ。わが苦しみと
憎しみを知るがいい・・・
    そう言い残すと、タタリ神の体は一気に腐敗し、
骨だけを残すのみとなった
53 町の人1 (匂いに)ウッ・・・(顔をしかめる)
    夜。村の神殿内
54 ヒイさま (占いをしながら)さて困ったことに
なった。かのシシは、はるか西の
土地からやって来た。深傷(ふかで)の
毒に気(きい)ふれ、身体(しんたい)は
くさり、走り走る内に呪いを集め、
タタリ神になってしまったのだ。
アシタカヒコや
55 アシタカ はい
56 ヒイさま みなに右腕を見せなさい
    包帯をとってみせる
57 町の人たち おお・・・
58 じいじ ヒイ様・・・
59 ヒイさま アシタカヒコや、そなたには自分のさだめを見す
える覚悟があるかい?
60 アシタカ ハイ。タタリ神に矢を射るとき、心を決めました
61 ヒイさま ・・・・・・そのアザはやがて骨までとどいて、そな
たを殺すだろう
62 アシタカ ・・・・・・
63 じいじ ・・・ヒイ様、なんとかなりませぬか?
64 町の人1 アシタカは村を守り、乙女らを守ったのですぞ。
65 町の人2 ただ死を待つしかないというのは・・・
66 ヒイさま 誰にも運命はかえられない。
だが、ただ待つか、みずからおもむくかは決めら
れる。見なさい。
    金属の塊を置く
67 ヒイさま あのシシの身体にくいこんで
いたものだよ。骨をくだき、はらわたを
ひきさき、むごい苦しみをあたえたのだ。
さもなくばシシがタタリ神などに
なろうか・・・・・・。西のくにで
何か不吉なことがおこっているのだよ。
その地におもむき、くもりの
ない眼(まなこ)で物事を見定めるなら、
あるいはその呪いを断つ道が
見つかるかもしれぬ。
68 アシタカ ハイ
69 長老 大和との戦さにやぶれこの地に
ひそんでから五百ゆう余年。いまや
大和の王の力は萎え、将軍どもの牙も
折れたと聞く。だが、我が一族の血も
またおとろえた。このときに一族の長と
なるべき若者が西へ旅立つのは、
定めかもしれぬ
70 アシタカ ・・・
    小刀で、自らの髷を落とす
71 町の人2 ウッ・・・(涙)
    アシタカは髪を祭壇に捧げる
72 ヒイさま 掟に従い見送らぬ。健やかにあれ
    小さくおじぎをするアシタカ
支度を終え。ヤックルにまたがる
73 カヤ 兄さま!
74 アシタカ カヤ!見送りは、禁じられているのに・・・
75 カヤ おしおきは受けます。どうかこれを。
私のかわりにお伴させてください
76 アシタカ (受け取って)大切な玉(ぎょく)の小刀じゃない
か・・・・・・
77 カヤ お守りするよう息を吹きこめました。いつもいつ
も、カヤは兄さまを思っています。

きっと・・・・・・きっと・・・・・・(涙)
78 アシタカ わたしもだ。いつもカヤを思おう
    村を出ていく
    山を越え
    川を越える
    小さな村が見える
79 アシタカ 戦さ・・・?
80 サムライ1 まわりこめ!
81 サムライ2 カブトクビだ!
82 サムライ1 勝負!勝負!
        アシタカに弓を引く男たち
アシタカはその場を離れようとする
その先で、逃げる女を刀で斬りつけようと
83 キャアッ
84 アシタカ やめろーー
    男に弓を引こうとすると、右腕のアザが
蠢き、苦痛をもたらす
85 アシタカ ・・・・・・!!アア・・・っ。
    苦痛に顔を歪めながらも、弓を打つ
86 アシタカ ウオーーッ
    斬りかかった男の両腕が切断される
87 サムライ2 へ・・・・・・!?ワァッ(倒れる)
    その場を走り抜けるアシタカ
88 アシタカ (右腕を抑えながら)なんだ、
この腕は!?
    馬に乗ったサムライが並走してくる
89 サムライ1 逃がさぬぞ!見参!
90 アシタカ 押し通る!邪魔するな!
        矢を撃ってくるサムライ。
アシタカも矢を撃ち返す。
放たれた矢は、サムライ3の首を飛ばす
91 サムライ2 鬼だ・・・
    山の中の湧き水で、右腕をつける
92 アシタカ アザが濃くなっている・・・
    市場
93 ジコ坊 ズズ・・・(と、椀をかきこむ)は〜・・・なんとも白湯
(さゆ)みたいなめしだな。
    アシタカの周りに人が集まっている
94 ジコ坊 おっ!いた!いた!
      ジコ坊、アシタカの方へとよっていく
アシタカは、米を買っている
95 アシタカ これでよいか?(と、金の粒を手渡す)
96 売り子 なんだいこりゃ?おアシじゃないじゃないか。おア
シがなきゃ、米を返しな
97 ジコ坊 まてまて拙僧が見てやろう。(砂金を見て)
ン・・・・・・!?おっ!!これは・・・・・・。女、これ
は砂金の大粒だぞ!
98 売り子
99 ジコ坊 そうだ。ゼニがいいなら、代金はワシが払(はら)
おう。これをゆずってくれ!

みなの衆!この近くに両替屋は
おらんかの?ア?おらんか?
100 客1 砂金だって!?
101 客2 砂金だと
102 客3 初めてみたな
103 ジコ坊 拙僧の見るところ、米一俵か・・・いや三俵
か・・・・・・・
104 客2 三俵!?
105 客1 すげえな
    アシタカは、その場を去ってしまう
106 ジコ坊 アッ。ちょっと待ちなさい
107 売り子 (ジコ坊の手をつかんで)返しとくれ!
あたしんだから!!
    ヤックルに乗って進むアシタカを、
追いかけてきたジコ坊
108 ジコ坊 お〜い!そう急がれるな。
イヤ、礼などと申す気はない。
礼を言いたいのは拙僧のほうでな。
田舎侍の小ぜりあいにまきこまれた折、
そなたのおかげで助かったのだ。
イヤァ、鬼神のごときとは正にあれだな。
    後ろをちらりと見る。
つけている者たちがいる
109 ジコ坊 ホッホッ、気づいたか。人前で砂金など
見せるとなァ。まことに人の心の
すさむこと麻のごとしだ。
寝こみをおそわれてもつまらぬ。
走るか・・・・・・エ?
110 ジコ坊 ホオ・・・・・・。イノシシがタタリ神になったか・・・。
111 アシタカ 足跡をたどって来たのですが、里に
降りたとたん、わからなくなりました。
112 ジコ坊 そりゃそうだろう。そこらを見なさい。
この前来た時には、ここにもそれなりの
村があったのだがナァ。
洪水か地すべりか・・・・・・
さぞたくさん死んだろうに。
戦さ、行きだおれ、病に、飢え。
人界(じんかい)は恨みをのんで、
死んだ亡者でひしめいとる。
タタリというならこの世はタタリそのもの。
    釜からすくって食べる
113 ジコ坊 ハフハフ・・・。うん、うまい。
114 アシタカ 里へおりたのはまちがいでした。
二人もあやめてしまった。
115 ジコ坊 おかげで拙僧は助かった。
椀を出しなさい。まず食わねば・・・
人はいずれ死ぬ。おそいか早いかだけだ
(荷物を探る)
ホウ、雅(みやび)な椀だな。
そなたを見ていると古い書に
伝わる、いにしえの民を思いだす。
東の果てにアカシシにまたがり、
石のヤジリを使う勇壮なるエミシの
一族ありとな・・・・・・
    椀によそったものを、アシタカに渡す
116 アシタカ (受け取り、すする)・・・・・・。・・・ズ・・・
117 ジコ坊 ハフハフ(食べる)かんじんなことは、
死にくわれぬことだ。イヤ、これは
師匠の受け売りだがな。
サァ、そなたの米だ。どんどん食え。
    荷物から、タタリ神の中から取り出した
金属を見せる
118 アシタカ このようなものを、
見たことはありませんか?
119 ジコ坊 (受け取る)・・・・・・。これは?
120 アシタカ イノシシの身体からでてきました。
巨大なイノシシにひん死の傷を
あたえたものです。
    金属を返し、食事を続けてから
121 ジコ坊 これよりさらに西へ西へと進むと、
山の奥のまた山奥に人をよせつけぬ
深い森がある。シシ神の森だ。
122 アシタカ シシ神の森?
123 ジコ坊 そこでは、ケモノはみな大きく太古のままに生き
ているときいた。

ズズズ・・・(食べる)
124 アシタカ ・・・
    早朝。ジコ坊には声をかけぬまま、
アシタカはその場を去る
125 ジコ坊 (寝ていたが)やはり行くか・・・(また眠りに付く)
    雨の中、山道を移動する者たち
126 牛飼い ホイッ、ホイッ(と、牛を進ませる)それっ
127 エボシ みな、あとわずかだ!油断すまいぞ!
128 町の人1 でたぞォ!犬神だァ!
    山を白い犬が2匹。1匹の上には人が乗っている
129 エボシ 牛を落ち着かせろ!焦らずに陣を組め!
130 ゴンザ せいて火薬をぬらすな!
充分に引きよせよ!
    石火矢衆が、構える
    犬が2匹接近してくる
131 エボシ 一番、放てっ!
    火を放つが、激しい身のこなしで
当てることができない
132 エボシ 二番、放てェ!
    当たりはしないが、
近づくこともできない犬たち
133 ゴンザ 化け物め、口ほどにもない
134 エボシ あれは子供だ。母親がなぜ来ない・・・・・・
    逆の方向から、2匹よりも大きな犬が
エボシたちに飛び掛ってくる
135 モロ っ!
136 エボシ モロだ!!
    行列へ跳びかかり、何人かの人と
牛が崖から落ちていく
137 甲六 ギャアアア・・・っ(転落)
138 エボシ (石火矢を構え)モロ、来い!!
      弾を発射
モロの右肩に着弾
139 モロ ググッ
      そして、至近距離でのゴンザが
石火矢発射
モロは崖下へと落ちていく
140 ゴンザ やりました!
141 エボシ きやつは不死身だ。
このくらいでは死なん!
142 ゴンザ だいぶやられましたな。
143 エボシ すぐ出発しよう
144 ゴンザ 谷に落ちた者はいかがします?
145 エボシ 隊列を組み直せ!!
    谷川を進むアシタカ
    上流から、牛や人の死体が流れてくる
146 アシタカ 息がある!!しっかりしろ!!
    一人を川から引き上げ
    もう一人、息がある人を見つけ、救助する
147 甲六 ううっ・・・
    ヤックルが何かの気配に気づく
148 アシタカ
    対岸に、傷ついた大犬
    大犬につかづく2匹の犬と女
149 サン (モロの傷を見て)アア・・・・・・
150 モロ グルルル・・・
151 サン (モロの傷口に顔をツッコミ、血を吸い出
す)・・・・・・プッ
152 モロ (アシタカに気づき)ウウウ・・・
153 サン (アシタカに気づく)!
154 アシタカ ・・・・・・!!
155 サン (アシタカを睨みつけながら立ち上がり)・・・プ
ッ・・・(と、血を吹く)
    アシタカはサンに姿が見えるように
岩に上がる
156 アシタカ わが名はアシタカ!東の果てより
この地へ来た!そなたたちは
シシ神の森に住むと聞く古い神か?!
    モロはのろのろと立ち上がり、歩き出す
157 サン (犬にまたがり)去れ!
    犬たちは森の中へと去っていく
158 甲六 ヒーーーッ(遠くで悲鳴)
159 アシタカ !(甲六たちのところへ戻る)
160 甲六 アワ、アワ、アワ・・・
161 アシタカ ・・・・・・・!?
    コダマが1匹
162 アシタカ コダマ?!ここにもコダマがいるのか
163 甲六 わーーっ
164 アシタカ 静かに!動くと傷にさわるぞ。
好きにさせておけば悪さはしない。
森が豊かな印(しるし)だ!
165 甲六 こいつらは、シシ神を呼ぶんだ
166 アシタカ シシ神?大きな山犬か?
167 甲六 ちがう!もっとおっかねぇ、化物の親玉だ。
    すっとコダマは消える
168 甲六 アアッ、消えた!
    きょろきょろする甲六
169 甲六 アアッ!!
    別のコダマがアチラコチラに出現
170 甲六 ヒイ・・・・・・
171 アシタカ ヤックルが平気でいる。
危険なものは近くにいない
    どんどんと現れるコダマ
172 甲六 ヒイ・・・(汗)
173 アシタカ (コダマに)すまぬが、そなたたちの森を
通らせてもらうぞ
    甲六をヤックルに乗せ、森を進む
174 甲六 (あちこちにコダマだらけ)おねげぇです。もどりま
しょうよ。むこう岸なら道が

ありやす。この森を抜けるなんて無茶だ。
175 アシタカ (意識のないもう一人を背負いながら歩く)流れが
強すぎて渡れない。

それにこのケガ人は早くしないと
手おくれになるぞ。
    先を歩くコダマ
176 アシタカ フフ。道案内をしてくれてるのか。
迷いこませる気なのか・・・。
177 甲六 だんなー、こいつらワシらを帰(かえ)さねぇ気なん
ですよ。どんどんふえてやすぜ。
178 アシタカ ハア、ハア・・・。・・・・・・!?
これがおまえたちの母親か。リッパな樹だ
    山間の空間が出てくる
    山犬とサンの足跡をみつける
179 アシタカ (!?)あの少女と山犬の足跡だ!
ここは彼らのナウバリか・・・
180 甲六 ダンナ・・・こんどこそヤバイですよ。ここはあの世
の入り口だ!
181 アシタカ そうだな。ちょっと休もう
    川の水を汲もうとする
    シシ神の足跡を見つける
182 アシタカ 足跡・・・?!ひずめが三つ・・・
まだ新しい
    森の奥深くを見ると
シシ神らしき生き物をみつける
するとアシタカの腕のアザが強く蠢いた
183 甲六 だ、ダンナ!どうしたんで
    腕を押さえつけ、水の中に腕を入れる
184 アシタカ くっ!ハァハァ
    シシ神らしき生き物は去っていく
185 甲六 ダンナ?大丈夫ですかい?顔色が
真っ青ですぜ?だから、ヤバイって!
    もう一人の男に水を飲ませるアシタカ
186 アシタカ おまえ・・・何かみたか?
187 甲六 え?
188 アシタカ いや、いい・・・
(もう一人の男に)もうちょっとの辛抱だ
189 すまねえ
190 アシタカ 行ってしまった・・・
    また、山道を歩くアシタカ
191 アシタカM なぜか、急に身体が軽くなった
192 甲六 あれ?痛くねえ・・・治った!
・・・いて、いてて・・・やっぱ、折れてる
    森を抜け、タタラ場に着く
193 甲六 ダンナ、すげえ!ドンピシャダ!
タタラについた!
194 アシタカ まるで城だな。
195 甲六 エボシさまの大タタラでさ。
砂鉄(てつ)をわかして鉄を
つくってるんです。
196 甲六 おーい!おーい!
197 町の人1 森から人が来る
198 町の人2 もののけか?
199 甲六 おれだ〜牛飼(うしか)いの甲六だ〜
200 町の人3 なにィ甲六が・・・
201 町の人1 カカァにしらせろ
202 町の人2 うそじゃねぇ!いま舟でこっちに来る
    茶屋で字を書くゴンザ
203 ゴンザ 何事か!?おれが字を書いてるときは
しずかにしろ!
204 町の人3 死んだはずの甲六がむこう岸に
でたんでさぁ
    川岸に集まる町の人
    みな、甲六に話しかける
205 町の人1 幽霊じゃねぇな
206 町の人2 他のヤツはどうした
207 町の人3 あと、二人落ちたんだ
208 甲六 助けられたのはおれたちだけだ
    石火矢衆に抱えられる男
209 町の女 死ぬのは牛飼いばかりさ
210 ゴンザ (野次馬達に)開けろ
211 町の人1 ゴンザ様・・・
あのずきんの男何者でしょうか?
212 ゴンザ 見慣れぬ姿だな・・・
213 甲六 石火矢の衆よ。このダンナが
ずっとおぶってくださったんだ。
礼(れい)を言っとけ
214 ゴンザ そこの者、まて!(アシタカに
近寄っていく)ケガ人をとどけてくれた
ことまず礼を言う。だが得心がいかぬ。
われらがここへついて半刻もせぬうちに
おまえは来た。しかも谷底から大の大人を
かつぎシシ神の森をぬけてだと・・・
215 トキ (甲六に駆け寄るトキ)
甲六〜生きとったんか〜。
216 甲六 おトキ〜!
217 トキ (甲六の足を見て)
牛飼いが足をくじいてどうやって
おマンマくってくんだよ
218 甲六 んなこと言ったってよ
219 トキ 心配ばかりかけやがって
いっそ山犬にくわれちまえば
よかったんだ。そうすりゃあたしは
もっといい男を見つけてやる
220 甲六 おトキ〜カンニンしてくれよ〜
221 ゴンザ トキ〜夫婦ゲンカはよそでやらんかい
222 トキ (ゴンザに詰め寄る)
なにさ。えらそうに。なんのための
護衛なのさ。ふだんタタラのひとつも
ふまないんだ
いざというときは生命をはりやがれ
223 ゴンザ しかたがなかろう・・・。
224 トキ ありがと
あんな亭主でも助けてくれてうれしいよ
225 アシタカ よかった。つれて来ては
いけなかったのかと心配してしまった
    大笑いするトキ
226 トキ へー、いい男じゃないか
ちょっと顔を見せておくれよ
227 エボシ ゴンザッ!あとで礼を言いたい。
客人を案内しなさい
228 エボシ 甲六、よく帰って来てくれた。
すまなかったな。
229 トキ そんな滅相もない。エボシさま
バカがつけあがるだけですよ
230 エボシ トキも
堪忍(かんにん)しておくれ。
わたしがついていたのにザマァなかった
231 トキ いいえ。男たちだけだったら
今頃みんな仲良く山犬の腹の中ですよ
232 エボシ 旅のおかたゆるりと休まれよ
    マスクを取り、エボシに一礼するアシタカ
233 トキ (振り返り)あらっ、いい男じゃない!
    働く町の人たち
    夜、町の中
234 町の人たち そ-れ
235 町の人2 モロをやっつけて運んだ米だ!
ありがたく食えよ!
    居間で男達とアシタカが食事をしている
236 町の女1 どこどこ?
237 町の女2 え?あの人?
238 町の女3 ほんとトキの言ったとおりじゃん
239 町の女1 いい男ね〜
240 町の女2 ちょっと若すぎない?
241 町の人3 しずかにしねぇか。通夜をやってるんだぞ
242 町の人1 いい男ならここにもいるぞ
243 町の女1 やなこった。牛飼いなんて
244 町の女2 ネィ、旅のおかたあたいたちの所へきなよ
245 町の女3 こんなクサイ小屋はやめてさ
246 町の人2 なんでェ。おれたちが生命がけで
運んだ米をくらってよ
口が腐るぜ!
247 町の女1 その米を買う鉄(てつ)はだれが
つくってるのさ。あたいたちは
夜っぴいてタタラをふんでるんだ
248 アシタカ よかったらあなたたちのはたらく所を
見せてください
249 町の女2 おしろいぬってタタラを踏まなきゃ
250 町の女3 紅(べに)もさす?
251 町の女1 きっとだよ-
252 町の女2 まってるからね〜
253 町の人3 ダンナ気をわるくしねぇでください
(酒を飲む)エボシさまが
甘やかしすぎるんで
254 アシタカ いい村は女が元気だと聞いています
255 町の人1 でもなぁタタラ場に女がいるなんてなぁ。
ふつうは鉄を汚すってそりゃ〜〜
いやがるもんだ
256 甲六 おっ!はじめやがった。エボシさまと
きたら売(う)られた娘を見ると
みんなひきとっちまうんだ。そのくせ掟も
タタリもヘッチャラなコワイ人だよ
257 町の人2 そうそう。ナゴの守(かみ)を
やったときなんか見せたかったぜ
258 アシタカ ナゴの守?!
259 町の人3 すげえでかいイノシシでよ。このあたりの
ヌシだったのよ。でよ、だれも山に
近よれねぇ。お宝の山を見ながら
人間様(さま)はをくわえてたのよ
260 町の人1 この下じゃ砂鉄(さてつ)を
とりつくしちまったからな
261 アシタカ 何人ものタタラ師がここをねらってよ。
みんなやられちまったんだ。
おれたちの稼業は山をけずるし
木を切るからな。山の主が怒ったてな。
そこへエボシさまが
石火矢衆(いしびやしゅう)を
つれてあらわれたってわけだ
    回想シーン
山が焼かれ、山の主が逃げる
262 町の人2 ダンナ、どうしたんで?
263 アシタカ そのイノシシのことを考えていた。
いずくで果てたかさぞ。うらみは深かろう
    鉄を叩いているエボシ
264 エボシ アシタカとやらまたしてすまぬな。
あすのおくりのしたくに手間どってね。
いい鋼(はがね)だ
265 エボシ ちょっと休もう。そなたを侍どもか、
もののけの手先とうたがう者(もの)が
いるのだ。このタタラ場を狙う者が
たくさんいてね。
旅のわけを聞かせてけれぬか
266 アシタカ (腕のあざをみせて)
このつぶてにおぼえがあるはず。
巨大なイノシシ神の骨をくだき
肉を腐らせタタリ神にしたつぶてです。
このアザはそのイノシシにとどめを
さしたときにうけたもの
死にいたる呪いです
267 エボシ そなたの国は?
見なれぬシシに乗(の)っていたな
268 アシタカ 東と北のあいだより・・・
それ以上は言えない
269 ゴンザ (刀を手にかけ)きさま!
正直にこたえぬとたたっきるぞ!
270 エボシ そのつぶての秘密を調べてなんとする
271 アシタカ くもりなきまなこでものごとを
見定(みさだ)め、決める
272 エボシ 曇りなきまなこ・・・
フフア-ッハハハハハハハわかった。
わたしの秘密を見せよう。来なさい。
ゴンザ!あとをたのむよ
    エボシの後を付いていくアシタカ
273 エボシ ここはみなおそれて近よらぬ。
わたしの庭だ。
秘密をしりたければ来なさい
274 働いてる人1 ちょうどくみあがったところですよ
275 エボシ (石火矢と持って)
まだちょっと重いな
276 働いてる人2 あまりけずると銅金がはじけます
277 エボシ わたしだけが使うのではない。
ここの女たちにもたせるのだ。
(アシタカのほうを向いて)
この者たちが考案した
新しい石火矢(いしびや) だ。
明国(みんこく)のものは重くて使いにくい。
この石火矢なら化物(ばけもの)も
侍(さむらい)のヨロイもうちくだけよう
278 働いてる人3 コワヤコワヤエボシさまは
国くずしをなさる気だ
279 エボシ いそがせてすまぬな。
あとで酒などとどけよう
280 アシタカ あなたは山の犬の森をうばい
タタリ神にしてもあきたらず
その石火矢でさらに新(あら)たなうらみと
呪いを生みだそうというのか?!
281 エボシ そなたには気の毒だった。
あのつぶて、たしかにわたしの放ったもの
おろかなイノシシめ。呪うならわたしを
呪えばいいものを
    アシタカの右腕が剣を取ろうとしたが
左腕でそれを抑える
282 エボシ その右腕はわたしを殺そうとしているのか
283 アシタカ 呪いが消えるものならわたしもそうしよう。だがこ
の右腕はそれだけではとまらぬ。
284 エボシ ここの者すべてを殺すまでしずまらぬか
285 働いてる人1 エボシ様、長が何か申しております
286 エボシさまその若者の力
あなどってはなりません
お若いかた、わたしも
呪われた身ゆえ。あなたの怒りや
悲しみはよくわかる。わかるが
どうかその人を殺さないでおくれ。
その人はわしらを人として
あつかってくださったたったひとりの人だ。
わしらの病(やまい)を
おそれずわしのくさった肉を
洗い布(ぬの)をまいてくれた。
生きることはまことに苦しくつらい・・・
世(よ)を呪い人を
呪いそれでも生きたい・・・
どうかおろかなわしにめんじて・・・
    犬の遠吠え
それに向かって石火矢を放つエボシ
287 エボシ また来ていたか。夜になると
ああしてもどってくるのだ。
山をとりもどそうと木を植(う)えにくる。
アシタカ、ここにとどまり力をつくさぬか
288 アシタカ あなたはシシ神の森まで
奪うつもりか?!
289 エボシ 古い神がいなくなればもののけたちも
ただのケモノになろう。森に光が
入り山犬どもがしずまれば
ここは豊かな国になる。
もののけ姫も人間にもどろう
290 アシタカ もののけ姫・・・
291 エボシ 山犬に心をうばわれたあわれな娘だ。
わたしを殺そうとねらいつづけている。
シシ神の血はあらゆる病をいやすと聞く
業病に苦しむ、あの者たちを癒し
そなたのアザを消す力もあるかも
しれぬぞ!
292 働いてる人2 エボシさま、首尾(しゅび)は
いかがでしょうや?
293 エボシ 上出来(じょうでき)だ。
正(まさ)に国くずしにふさわしいが・・・
やはりちょっとおもいな
294 働いてる人3 へへへ・・・こわやこわや
    タタラ場に入っていくアシタカ
295 町の女1 あらっ?!あんた
296 アシタカ おトキさん、わたしもふませてくれ。
(町の女に)かわってくれないか。
297 トキ せっかくだからかわってもらいな
298 町の女2 あ・・うん
299 町の女たち すごい力!
300 トキ ねっイイ男だろう。そんなにリキむと
つづかないよ。旅人(たびびと)さん
301 アシタカ きびしい仕事だな
302 トキ そりゃそうさ
四日五晩(よっかいつばん)ふみめくんだ
303 アシタカ ここのくらしはつらいか?
304 トキ そりゃあさ・・・でも下界(げかい)に
くらべりゃずっといいよ
305 町の女3 お腹いっぱい食べられるし。
男がいばらないしさ
    笑う女達
    夜の森を山犬にまたがり進むサン
306 山犬 (サンに鼻を撫でられ)ウ〜〜ッグルルル
    仮面を被るサン
307 町の女1 あした行っちゃうの?
もっといればいいのに
308 アシタカ ありがとう、でもどうしても
会(あ)わなければならない者がいるんです
309 町の女2 ここではたらきなよ
310 アシタカ ハッ
    山犬に乗って迫り来るサン
311 アシタカ 来る!
312 町の人1 もののけ姫だ!
    サンに向かって石火矢を放つ石火矢衆
313 町の人1 うわっ!くっ。うわっ〜
314 アシタカ
    場内に侵入したサン
屋根を走り回る
315 町の人2 姫だ〜!
    アシタカに向かって剣を振るうサン
316 アシタカ (サンの斬撃を受け止め)やめろ!
317 アシタカ くっ!
318 アシタカ そなたと戦(たたか)いたくない!
319 町の人3 入ったのは姫ひとりだ
320 町の人1 御殿のほうへ行くぞ!
321 ゴンザ かがり火をふやせ。
石火矢衆は柵(さく)をかためて
外へ逃すな!
322 町の人2 もち場(ば)をはなれるな
323 町の女2 この屋根(やね)のにいるらしいよ
324 トキ さわぐんじゃない。休まずふみな!
火をおとすととりかえしがつかないよ
325 エボシ ひとりか?
326 ゴンザ はっ、よほど追いつめられたと見えます。
エボシさまをねらってのことでしょう
327 エボシ しかたがない。来なさい
    エボシの後を付いてくる女たち
エボシは町の中央広場へ
328 エボシ もののけ姫!きこえるか。わたしは
ここにいるぞ。おまえが一族の仇を
うとうというならこちらにも山犬に
くい殺された夫(おっと)の無念をはらそうと
心に決めた者たちがいる。
329 町の女3 でておいて!
今夜こそケリをつけてやる
    屋根の上に現れたサン
330 町の人たち 出た〜いたぞ〜!
331 アシタカ (バカな・・・?!)
332 町の人3 前をあけろ!流れ弾にあたるぞ!
    屋根の上で発砲準備をする石火矢衆
333 アシタカ (屋根の上の石火矢衆を見て)
罠(わな)だ!(・・・)やめろ-!
334 アシタカ 山犬の姫、森へ帰(かえ)れ!
みすみす死ぬなしりぞくも勇気だ!
335 ゴンザ やはりあいつ!
336 エボシ 好きなようにさせておけ
    エボシに向かって走っていくサン
337 アシタカ くっ!
    石火矢衆の一斉射撃
屋根にあたり、爆風で屋根を
転がり落ちるサン
338 ゴンザ やった〜!おちるぞ!
339 エボシ 動くな!首だけになっても
食らいつくのが山犬だ!
340 エボシ おちた所をねらいな!
    尋常ではない力で
屋根の木を取ろうとするアシタカ
    屋根から落ちて着地するサン
341 エボシ はなて!
    女たちが石火矢でサンを撃ち
一発がサンの仮面に命中する
342 ゴンザ やった-
343 アシタカ 動くなー(屋根をゴンザに向かって投げる)
344 ゴンザ (たいまつに木が当たり火が散る)あちち
345 アシタカ (サンに駆け寄り)しっかりしろ!
346 サン (目ざめてアシタカに剣を振るう)えいっ!
347 アシタカ やめろ〜!
    アシタカの脇を抜け、エボシのもとへ
走るサン
348 ゴンザ ぬん!(サンに向かって刀を振るう)
(サンがジャンプをしてかわす)
なにっ!?
(ゴンザの顔面を踏むサン)うおー!?
349 サン うわー!!(エボシに向かっていく)
    サンの攻撃を受け止め、反撃するエボシ
350 町の女1 袋(ふくろ)のネズミだ!
逃がしちゃだめだよ
    二人の戦いをみているアシタカ
右腕のあざから黒い蛇のような
ものが蠢く
351 町の人1 ゴンザさまお気をたしかにっ
352 ゴンザ 俺にかまうな!行け!
353 ゴンザ (アシタカを見て)ウッ
354 ゴンザ うぬは・・・やはり・・・
もののけのたぐいかっ?!とまれぇっ!
    ゴンザの言葉無視して進むアシタカ
355 アシタカ どいてくれ
    ゴンザの剣を素手で曲げて脇を通る
野次馬を割って二人の戦いの中に入る
そして、二人の腕を掴む
356 エボシ なんのまねだアシタカ。
357 アシタカ この娘の生命(いのち)わたしがもらう。
    アシタカの腕に噛み付くサン
358 エボシ その山犬を嫁(よめ)にでもする気か?!
359 アシタカ そなたの中には夜叉がいる
この娘の中にもだ
    あざから黒い蛇のようなものが出てくる
360 町の人たち おお・・・
361 アシタカ みんな見ろ。これが身の内に
巣(す)くう憎(にく)しみと恨みの姿だ・・・
肉をくさらせ死を呼びよせる呪いだ!
これ以上憎しみに身をゆだねるな!
362 エボシ さかしらにわずかな不運を見せびらかすな
363 サン アアッうわっ
364 エボシ その右腕切りおとしてやろう!
    エボシの一撃をかわし、反撃。
エボシを気絶させ、サンも同様に
気絶させる
365 町の女 エボシさま!
366 アシタカ だれか手をかしてくれ。
(駆け寄る町の女)
心配するな気がつく。
この娘、わたしがもらいうける
367 町の女 (石火矢を構えながら)
おまちっ!逃がしはしないよ!
よくもエボシさまを・・・動くんじゃない!
368 町の女 キヨ!やめな!
    誤って発砲。弾がアシタカの腹部を貫通
しかし、アシタカは門への歩みを止めない
369 町の女 あたったのに歩いとる・・・
  ゴンザ エボシ様は?
  町の人 ご無事です
372 ゴンザ おれの石火矢をもってこい!
石火矢衆はここに集まれ!
このまま逃がしてなるか!
    タタラ場の前をサンを担いで歩くアシタカ
373 町の女 おトキ!早く!
374 トキ あんた?!
(地面を見て、血が出ていることに気づく)
    門の前
375 町の人 だんな、ここは通れねぇ。
ゆるしがなければ門はあけられねぇんだ。
376 門番1 あなたは仲間を助けてくださった
377 門番2 敵にしとうありませんどうかおもどりを
378 アシタカ わたしは自分でここへ来た。
自分の足でここをでて行く
    自力で門を開けようとするアシタカ
徐々に出血もひどくなる
379 町の人 だんな、いけねェ!死んじまう!
    門が開く
380 町の人たち 動いた!すげぇー
381 門番1 アア〜
    山犬が走ってくる
382 ゴンザ どけ〜!山犬だー!
(石火矢を構える)
ん?火?火は?
383 アシタカ (山犬たちに向かって)
やめろ!そなたたちの姫は無事だ!
いまそっちへ行く!行こう、ヤックル。
(町の人へ)世話になった
    門が閉まる
384 町の人 行ってしまわれた
    岩場を走っている
ヤックルにまたがっている二人
しかし、途中で落ちるアシタカ
その時、山犬がアシタカの頭にかぶり付く
385 サン おまち!わたしのエモノだよ。
(アシタカに近づくサン)
おまえ射たれたのか。死ぬのか。
死の前に答えろ!
なぜわたしの邪魔をした?
386 アシタカ そなたを死なせたくなかった
387 サン 死などこわいもんか!人間を
追い払(はら)うためなら生命などいらぬ!
388 アシタカ わかっている・・・最初に会ったときから
389 サン 余計な邪魔をして、無駄死にするのは
おまえのほうだ!
(アシタカの喉に剣を突きつける)
そのノド切りさいて。二度とムダ口が
たたけぬようにしてやる!
390 アシタカ 生きろ・・・
391 サン まだ言うか!人間の
指図(さしず)はうけぬ!
392 アシタカ そなたは美しい・・・
393 サン
394 山犬 どうしたサン!
オレがかみくだいてやろうか?
    石を投げる猩々(しょうじょう)たち
395 サン はっ。猩々たち・・・
396 山犬 猩々ども・・・われらがモロの一族と
しっての無礼か?!
397 猩々たち ここはわれらの森。その人間よこせ。
人間よこしてさっさと行け
398 山犬 うせろ!わが牙がとどかぬうちに!
399 猩々たち オレたち人間くう。
その人間くうその人間くわせろ
400 サン 森の賢者とたたえられるあなたたちが
なぜ人間などくおうというのか?
401 猩々たち 人間やっつける力ほしい、だからくう
402 サン 人間を食べても人間の力は
手に入らない。あなたたちの血が
けがれるだけだ
403 猩々たち 木・・・うえた木・・・うえみんな人間め
森もどらない。人間殺したい
404 サン わたしたちにはシシ神さまがついてる。
あきらめないで木をうえて・・・
モロの一族はさいごまで戦う
405 猩々たち シシ神さま戦わない。わしら死ぬ。
山犬の姫、平気・・・人間だから・・・
406 サン
407 山犬 無礼なサルめっ!
そのクビかみくだいてやる!
408 サン おやめっ!平気・・・気にしない・・・
おまえたち先に帰りな。この人間の
しまつはわたしがする
409 山犬 (ヤックルを見て)
あいつは?食べていい?
410 サン 食べちゃダメ!
411 サン さあ、行きな!
412 サン (ヤックルへ)
おいで!仲なおりしよう!
おまえの主人を運ぶから・・・
力をかしておくれ
    アシタカをヤックルに乗せ
シシ神の森奥深くへ
    池のほとりに着く。アシタカを降ろし
小さな離れ小島に連れて行くサン
413 サン おまえはかしこいね。この島には
のぼらないほうがいい・・・
(自分の体の匂いを嗅いで)人間くさい。
(ヤックルに近づき、手綱を取る)
すきな所へ行き。好きに生きな
    その場を離れるサン
大量のコダマが音を立てる
ディダラボッチ登場
414 ジコ坊 おお〜でたぁ。ディダラボッチだ!
ついに見つけた。なにをしとる!
早く見んか!なんのために
こんなクサイ毛皮をかぶって
耐えてきたんじゃ
415 狩人1 シシ神さまを見ると目がつぶれるワイ
416 ジコ坊 それでもヌシは西国一の狩人か?
この天朝(てんちょう)さまの書きつけを
なんとこころえる。
天朝さまがシシ神退治を
みとめとるんだぞ!
早くしろ!
417 ジコ坊 ディダラボッチはシシ神の夜の姿だ。
いまに夜から昼(ひる)の姿に
かわるそこがシシ神のすみかだ。
おおっ、消えるぞ。あそこだ!
    シシ神がアシタカに近づく
   
山間を歩くジコ坊
茂みの隙間から猪の行列をみる
418 狩人1 ジコ坊さま
419 ジコ坊 判っとる
420 狩人1 あそこを
421 ジコ坊 おお、これは?なんとも
おびただしい数(かず)だな。
  狩人1 ありゃあこの森のもんじゃねぇ。
それぞれいずくかの山の名のある主だ。
むっ。あれは?鎮西(ちんぜい)の
乙事主(おっことぬし)だっ!
    乙事主登場
423 ジコ坊 鎮西(ちんぜい)?!
海を渡って来たと言うのか?
424 狩人1 まちがいねぇ。あの四本牙!
一族をひきいて来やがったんだ!
425 ジコ坊 (乙事主に見られているのに気づく)
ばれたっ!ひきあげだ!いそげ!
426 乙事主 ぶぎゃー
427 イノシシたち ピ-ギャ-ブヒ-ピギャー
    川の岩場
428 ジコ坊 早くしろ!
    シシ神の森
429 アシタカ うっう・・・ん、はっ!傷がない!
    近寄るヤックル
430 アシタカ ヤックル
     
431 サン 目がさめてたらヤックルに礼を言いな。ずっとお
まえを守っていたんだ
432 アシタカ どうしてヤックルの名を・・・
433 サン 自分からいろいろ話してくれた。
おまえのことも古里(ふるさと)の
森のことも。シシ神さまがおまえを
生かした。だから助ける
434 アシタカ ふしぎな夢を見た。金色の鹿だった・・・
435 サン 食べろ
    干し肉をちぎってアシタカに食べさせる
436 サン かめ!
    噛めずに干し肉を落としてしまう
437 アシタカ おまえ・・・
    サンが干し肉を噛み砕き、アシタカに
口移しで食べさせる
    モロと猪達が対峙する
438 イノシシ われらは人間を殺し森を守るために
来た・・・なぜここに人間がいる?!
439 モロ わたしの娘だ。人間などどこにでもいる。
自分の山にもどりそこで殺せばいい
440 イノシシ シシ神の森を守るために殺すのだ!
なぜ人間がここにいる・・・
441 サン この人間の傷をシシ神さまがいやした。
だから殺さずにかえす
442 イノシシたち シシ神が人間を助けいやしただと!
なぜナゴの守(かみ)を
助けなかったのだ!
シシ神は森の守り神ではないのか?!
443 モロ シシ神は生命をあたえもし奪いもする。
そんなことも忘れてしまったのか、猪ども
444 イノシシたち ちがう。山犬がシシ神をひとりじめしてる
からだ。ナゴを助けず裏切ったからだ!
445 モロ きやつは死をおそれたのだ。
いまのわたしのように。
わたしの身体にも人間の毒つぶてが
入っている。ナゴは逃げわたしは
逃げずに自分の死を見つめている
     
446 サン モロだからシシ神さまに・・・
447 モロ サン!わたしはすでにじゅうぶんに
生きた。シシ神は傷をなおさず生命を
すいとるだろう
448 サン そんなはずはない!
母さんはシシ神さまを守ってきた
449 イノシシたち 騙されぬぞ!ナゴは美しく強い兄弟だ!
逃げるはずがない!
山犬どもが食(く)っちまったんだ!
450 サン 黙れ!
母さんをバカにするとゆるさんぞ!
451 アシタカ あらぶる山のかみがみよ、きいてくれ!
    アシタカを見る猪たち
452 アシタカ ナゴの守(かみ)にとどめをさしたのは
わたしだ。村をおそったタタリ神を
わたしはやむなく殺した。
大きな猪神だった。これがあかしだ!
あるいはこの呪いをシシ神が
といてくれぬかとこの地へ来た。
だが・・・シシ神は傷はいやしてもアザは
消してくれなかった。呪いがわが身を
くいつくすまで苦しみ生きろと・・・
453 モロ 乙事主だ・・・
少しは話のわかるヤツが来た
    アシタカに近づく乙事主
454 サン 待って、乙事主さま!
この人を食べてはダメ!
455 乙事主 モロの娘だね。うわさはきいていたよ
456 サン あなた目が・・・
457 アシタカ 山犬の姫かまわない。
ナゴの守(かみ)のさいごを伝えたいから
    アシタカの匂いを嗅ぐ乙事主
458 乙事主 ありがとうよ、お若いの・・・悲しいことだが
一族からタタリ神がでてしまった・・・
459 アシタカ 乙事主どのこのタタリを消す術は
ないのだろうか・・・
460 乙事主 お若いの森を去れ次に会うときは
殺さねばならぬ
461 モロ 乙事主よ、数(かず)だけでは
人間の石火矢には勝てぬぞ!
462 乙事主 モロ、わしの一族を見ろ!
みんな小さくバカになりつつある。
このままではわしらはただの肉として
人間に狩られるようになるだろう・・・
463 モロ 気に入らぬ一度にケリをつけようなどと
人間どもの思うつぼだ!
464 乙事主 山犬の力をかりよいとは思わぬ。
たとえ・・・わが一族ことごとく滅ぶとも
人間に思いしらせてやる!
    去る乙事主と猪たち
池の上に現れたシシ神
465 サン ・・・シシ神さま・・・
    合戦場
466 町の人 ドウドウ。牛をちらすな!
467 エボシ まだ撃つな。ひきよせろ!
468 侍たち (エボシ陣営に突っ込んでいく)
うわー
469 エボシ はなてぇ!
    石火矢衆一斉射撃
470 ひいい・・・
471 ゴンザ 弾込め、急げェ!
472 ジコ坊 (戦場をみて)
やれやれ。エボシのやつ相手が
ちがうだろうに。(唐傘連に)
・・・おまえたち、先に行きひそんでおれ
    戦場から帰ってくるのを見て
473 町の女 みえた!帰って来たよー
474 石火矢衆 おかしら
475 ジコ坊 苦労(くろう)をかけるな
そろそろ動く。みなにもそう伝えよ
476 石火矢衆 はっ
    エボシに近づく、ジコ坊
477 ジコ坊 師匠連(ししょうれん)から矢(や)の催促だ
田舎侍とあそんどるときではないぞ
478 エボシ アサノ公方(くぼう)が地侍(じざむらい)どもをそそ
のかしてるのだ
479 ジコ坊 アサノか・・・大侍だな
480 エボシ 鉄を半分よこせと言ってきた
481 ジコ坊 そりゃあごうつくだ
だがいまは人間とやりあうヒマはない
森に猪神があつまっておる
・・・じきに来るぞ!この際、鉄など
全部くれてやれ。師匠連への約束を
はたしてから戦さでもなんでも
やればよかろう
482 町の女 エボシさまーお早くー侍が来ます。早くー
483 ジコ坊 うわさをすれば
・・・あれはアサノの使者だな
484 エボシ 使者だ。
丁重(ていちょう)にもてなしなさい!
485 町の女たち ハーイ!
486 ジコ坊 (ジコ坊が入った途端に閉まる門)
おい、会わんのか!?
487 使者 (門の前で)
タタラバのエボシとやら、
さきほどの地侍あいての戦さみごとなり!
われらは公方さまの使者としてまいった。
かいこまって門をひらけい!
488 トキ フン。用があるならそこで言いな!
この山はエボシさまがもののけから
切りとったんだ。金になるとわかって
手のばしやがって!とっとと帰れ!
489 使者 女ども使者への無礼ゆるさんぞ!
490 町の女1 無礼だってさ。こっちは生まれたときから
ズーッと無礼だい
491 町の女2 鉄がほしけりゃくれてやるよ!
(使者に向かって発砲する)
492 使者
    逃げる使者
493 町の女たち アハハハハハッ
    茶屋で話しをしているジコ坊とエボシ
494 ジコ坊 いやぁまいった。まいった。大侍も
もののけも眼中になしか。エボシタタラの
女たちのいさましいことよ
495 エボシ こんな紙きれが役に立つのか?
496 ジコ坊 まあいろんな輩(やから)を
あつめるにはききめがある!
497 エボシ けものとはいえなにしろ。神を殺すのだ
    町の女を呼ぶエボシ
498 町の女1 はい、エボシさま
499 エボシ (書状を見せ)
そなたたち、この書きつけがわかるか?
    書状を見てもピンと来ない町の女
500 エボシ 天朝さまのだ
501 町の女2 天朝さまって?
502 エボシ みかどだ
503 町の女1 みかど・・・?
504 ジコ坊 (町の女の様子をみて)
いやぁまいった。まいった
505 エボシ いいよ・・・
506 町の女2 はい
507 エボシ わたしたちがここで鉄を
つくりつづければ森の力は弱まる。
それからのほうが犠牲も少なくすむが・・・
508 ジコ坊 金も時間もじゅうぶんにつぎこんだ
石火矢衆四十名をかしあたえたのは
鉄をつくるためではないぞ・・・
とまあ師匠連は言うだろうなあ
509 エボシ まさかそなたまでシシ神の生首に
不死不老の力があると思ってはいまいな
510 ジコ坊 やんごとなき方々や師匠連の考えは
ワシにはわからん
・・・わからんほうがいい
511 エボシ (立ち上がり)
約束は守る。モロ一族のかわりに
猪の群れが森にひしめくなら
かえってやりやすかろう。
崖の裏にひそんでいるあやしげな
手下どもをよびよせるがいい
512 ジコ坊 いやぁハハハ・・・ばれてたか。
あっ、そうだ!もうひとつ
    エボシ去ろうとする
513 ジコ坊 少年がひとりたずねて来なかったか?
アカシシに乗ったふしぎな少年だが・・・
514 エボシ 去った・・・
    場内に入る唐笠連やジバシリ達
515 町の女1 (ジバシリや唐笠連を見て)
なんか気味が悪いよ
516 甲六 ありゃあただの狩人じゃねぇジバシリだ
517 町の人1 ジバシリ・・・?
    エボシ邸にて集まる町の女たち
518 町の女2 わたしたちもおともさせてください!
519 町の女3 あんな連中を信用しちゃダメです!
520 町の女1 エボシさまになんかあったらとりかえしが
つかないもの
521 町の女2 せっかく石火矢をおぼえたんだから・・・
522 エボシ だからこそみんなにここを
守ってもらいたいのさ。こわいのは
もののけより人間のほうだからね。
シシ神殺しがすんだらいろいろ
わかるだろうよ。唐傘連の師匠たちが
シシ神の首だけでここから手を
ひくもんかね・・・侍だけじゃないよ。
石火矢衆が敵となるかもしれないんだ。
男はたよりにできない。
しっかりやりな、みんな
    町の女一同、首を縦に振る
523 ゴンザ エボシさまのことは案ずるな!
このゴンザ、かならずお守りする
524 トキ それがホントならねぇ・・・
525 ゴンザ なにい!
526 トキ あんたも女だったらよかったのさ。
んべ〜〜ッ
527 ゴンザ う・・・
528 エボシ ハハハハハハハ・・・
529 トキ くくっ
   
洞窟内
530 アシタカ くっ・・・(目が覚める)
     
531 サン ・・・(アシタカの横で眠っている)
532 アシタカ
533 アシタカ ぐっ(起き上がる)
    外に出るアシタカ
534 アシタカ (森をみて)
・・・
535 モロ (上からアシタカを見下しながら)
つらいか・・・
そこからとびおりれば簡単に
けりがつくぞ。
体力が戻ればアザもあばれだす
536 アシタカ (モロに向かって)
わたしは何日もねむっていたようだな。
夢うつつにあの子に世話になったのを
おぼえている
537 モロ おまえがひと声(こえ)でもうめき声を
あげればかみ殺してやったものを・・・
惜しいことをした
538 アシタカ 美しい森だ。
乙事主はまだ動いていないのか・・・
539 モロ 穴にもどれ小僧!おまえには聞こえまい。
猪どもに喰い荒される森の悲鳴が
・・・わたしはここでくちていく身体と
森の悲鳴に耳をかたむけながら
あの女を待っている。
・・・あいつの頭をかみくだく瞬間を
夢見ながら・・・
540 アシタカ モロ・・・森と人間が争(あらそ)わずに
すむ道はないのか?
ほんとにもうとめられないのか?
541 モロ 人間どもがあつまっている
きゃつらの火がじきにここにとどくだろう
542 アシタカ サンをどうする気だ。
あの子も道づれにするつもりか!?
543 モロ いかにも人間らしい
手前勝手(てまえがって)な考えだな。
サンはわが一族の娘だ。
森と生き森が死ぬときはともにほろびる
544 アシタカ あの子を解きはなて!
あの子は人間だぞ!
545 モロ だまれ、小僧!おまえにあの娘の不幸が
いやせるのか。森をおかした人間が
わが牙をのがれるために
なげてよこした赤子がサンだ・・・!
人間にもなれず山犬にもなりきれぬ
哀れで醜い可愛い我が娘だ!
おまえにサンをすくえるか!?
546 アシタカ わからぬ・・・
だが共に生きることはできる!
547 モロ ファッファッどうやって生きるのだ。
サンと共に人間と戦うというのか
548 アシタカ ちがう!それでは憎しみをふやすだけだ
549 モロ 小僧・・・もうおまえにできることは
なにもない。おまえはじきにアザに
喰い殺される身だ。
夜明けとともにここを立ち去れ!
    洞窟内に戻るアシタカ
550 サン ・・・歩けたか?(横になりながら)
551 アシタカ ありがとう。サンとシシ神さまのおかげだ
552 サン ・・・(また、眠る)
   
洞窟から出たアシタカ
ヤックルが木に繋がれている
553 アシタカ ヤックル!心配かけたな。
    高いところから飛び降りる
着地したと同時に転ぶ
554 アシタカ う・・・!?
痛・・・足がすっかりなまってしまった
    アシタカヤックルに乗り
山犬に連れられて森を抜ける
555 アシタカ 静かすぎる。コダマたちもいない・・・
    岩場についたアシタカ
556 アシタカ タタラ場のにおいがかすかに風に
まじっている。案内ごくろう!
ひとつたのみがある・・・
サンにこれをわたしてくれ!
(山犬に向かってお守りを投げる)
(ヤックルに向かって)
いこう・・・
     
557 サン ひどいにおい・・・鼻がもげそう
558 モロ ただの煙じゃない。わたしたちの鼻を
きかなくしようとしているのさ
559 サン ・・・あの女がいる!
こっちに気づいている・・・
560 モロ みえすいた罠をはったものだ
561 サン わな・・・?
562 モロ 猪どもをいきりたたせて森から
おびきだそうとしているのだよ。
よほどのしかけがあるのだろう
563 サン おしえなきゃ!猪たちは動きはじめてる。
みんなやられてしまう
564 モロ 乙事主とてばかではない・・・
すべてわかっていても猪たちは正面から
攻撃したいのさ・・・
最後の一頭になっても
突進してふみ破る!
    エボシ陣営木を切り倒している
565 サン 木をきりはじめた・・・
566 モロ あれもさそいだ
567 サン (サン、モロに抱きつき)
かあさん、ここでお別れです。
わたし乙事主さまの目になりにいきます。
あの煙にこまっているはずだから。
568 モロ それでいいよ・・・
おまえにはあの若者と生きる道も
あるのだが・・・
569 サン 人間はきらい!
    アシタカと会ってきた山犬と合流する
アシタカからもらったお守りを
サンに渡す
570 サン アシタカがわたしに・・・
(お守りを見て)綺麗
571 モロ おまえたちはサンとおいき!
わたしはシシ神のそばにいよう
572 サン いこう!
    山犬にまたがるサン
猪と合流
573 サン モロ一族もともにたたかう!
乙事主さまはどこか!?
574 ぶひー!!
575 サン ありがとう!
    雨が降ってくる
ヤックルにまたがり進むアシタカ
銃声を聞きつける
576 アシタカ タタラ場からだ!いこう!
    侍が数名、川のほとりにいる
577 侍1 何者かぁ!?
578 アシタカ 侍だ!
579 侍1 とまれェ!
580 アシタカ おしとおる!
581 侍1 こいやァ!
    ヤックル侍に向かって走る
侍が薙ぐとジャンプをしてかわす
そのまま、川へ入る
582 侍1
583 侍2 こりゃあたまげた!
    侍たちが矢を撃つ
刀で落とすアシタカ
584 侍1 とめたぞ!やるのォ!
585 侍2 矢のむだだ!やめとけ!
    川からタタラ場に近づく
586 町の女1 (アシタカを見つけて)
早く早く!
587 トキ ほんとだ。あの人だよ
588 町の女2 幽霊じゃないよね?
589 トキ アシタカさまーっ!
590 アシタカ おトキさんかー!みんな無事かー!?
591 トキ 見てのとおりさ男たちの留守を
ねらって侍どもがおしよせてきやがった!
592 町の女3 下はやられちまった
593 トキ 女ばかりとあまく見やがって
594 アシタカ (上陸して)
・・・エボシ殿は?
595 トキ 動ける男はみんなつれて
シシ神退治にいっちまってる。
囲まれては知らせようがなくてさ
596 アシタカ シシ神退治・・・やはりさっきの音は・・・
597 甲六 (弓と矢を投げる)
ダンナーあずかってましたぜーっ!
598 トキ なんで鞍とミノも持ってこなかったのさ!
599 甲六 だって・・・
600 トキ この役立たず!
601 アシタカ 甲六、ありがとう!(弓の弦を張る)
エボシ殿をよびにいく!
それまでもつか・・・!?
602 トキ いざとなったらとけた鉄を
ぶっかけてやるさ!
603 町の女1 アシタカさま、おねがいします!
エボシさまにはやく!
    川にいる侍に砲撃する石火矢衆
604 町の男1 はぁーはずしたか・・・
605 町の男2 船が来ますぞ、おはやく!
エボシさまおたのみます!
わたしらも戦いますゆえ!
606 アシタカ (ヤックルに乗って)
かならずもどる!
607 トキ たのむよーっ!
608 町の女2 お気をつけて・・・
609 甲六 (顔の前に矢が飛んで来て)
610 侍1 でたぞーッいっきーー
    侍が警報用の弓矢を放つ
611 アシタカ 追手(おって)がかかった!
たのむぞ、ヤックル!
    騎馬四騎に追われる
    焼けただれている何かを発見する
612 アシタカ 生きものの焼けるにおいだ・・・
    ヤックル矢に討たれる
アシタカ転げ落ちる
613 アシタカ (ヤックルに駆け寄り)
ヤックル!
    騎馬2騎が迫り来る
614 侍1 こいやぁー
    アシタカがヤックルの身で矢を抜いてる
615 侍1 うおおおおおおお!
    アシタカ、矢を放つが鉄の鎧に
矢が阻まれる
616 アシタカ
    アシタカ剣を抜く
617 侍1 おらららららー!
    アシタカのアザが大きくなる
侍が斬りかかったと同時に
侍の両腕が宙に浮く
618 侍1
    侍が矢を放つ。それを素手で掴み
打ち返して侍を倒す
619 アシタカ 来るな!
    騎馬2騎が刀を抜き、遠くから迫る
アシタカが矢を放つ
一騎の首が飛ぶ
もう一騎は逃げていく
620 アシタカ ヤックル、傷を見せろ!すまないここで
まっててくれ!かならずもどる。
    付いてくるヤックル
621 アシタカ だめだ、まってろ!
    ヤックルと一緒に行く
622 アシタカ がんばれもうすこしだ
    猪たちの死骸の中を進むアシタカ
その先で牛飼いの死体を見つける
そこにいた牛飼いに話しかけようとする
623 兵士1 何者か!?
624 兵士2 ここは修羅の庭。
よそ者はすぐ立ち去れい!
625 アシタカ この死者たちの世話になった者だ。
いそぎ伝えたいことがある。
エボシ殿に会いたい
626 兵士1 エボシはここにはいない。
伝えよう、用むきを話せ!
627 アシタカ 本人に話す。エボシ殿はどこか!?
628 町の男1 だんなー!生きとったんですか!
629 アシタカ むごいことになったな。
630 町の男2 まだ何人もうまってるんでさ
631 町の男3 ひでえなんてもんじゃねぇ
632 アシタカ タタラ場が侍におそわれた
633 町の男1 ええっ!?
634 アシタカ 女たちが上の曲輪(くるわ)にたてこもって
頑張っている。いまならまだ、間にあう
635 町の男2 えれぇことになった・・・
636 町の男3 アサノのやつらだ・・・
留守をねらいやがった
637 アシタカ エボシ殿はここにはいないのか!?
638 町の男1 へぇ・・・シシ神殺しに森へ・・・
639 アシタカ すぐ呼び戻せ!間にあわなくなるぞ
640 兵士1 用むきがすんだら即刻(そっこく)たち去れ
641 兵士2 みな仕事にもどれ!
    兵士に詰め寄る町の男
642 町の男2 おい、ほっとく気かよ!
643 町の男3 ちょっと待ってくだせえ
644 町の男1 あいつらタタラ場を見殺しにする気だぞ
645 町の男2 帰りを待ってたりしちゃ
手おくれになっちまう
646 町の男3 すぐ使いをだせ!
647 兵士1 森はひろくて深い。
使いのだしようがないのだ
648 町の男1 ウンをつくなよ!
649 町の男2 のろしでもなんでも
あんたちの得意だろうが!
650 町の男3 エボシさまはやつらにおどらされてるんだ
651 アシタカ 攻めよせた猪の中に
山犬はいなかったか?
652 町の男1 えっ?
653 アシタカ サン・・・いやもののけ姫は?
654 町の男2 さぁわからねぇ・・・
まっくろになっておしよせてきたから・・・
655 町の男4 いました・・・お・・・おれたちが
いちばん前にいたから・・・
656 アシタカ それで・・・
657 町の男4 わからねぇ!とつぜんなんにも
わからなくなっちまって・・・
唐傘のやつら、おれたちをエサに猪を
おびきよせ・・・地面ごと
ふっとばしやがったんでさ。
上からも地雷火をなげやがった・・・
658 町の男3 唐笠のやつら俺たちをエサに
猪たちをおびき寄せ、地面ごと
ふっとばしちまいやがったんでさ
     
659 アシタカ はっ
660 山犬 (猪の死体から出てくる山犬)
ガウヴウ〜ッ
661 アシタカ (何かに気づく)
・・・!
662 町の男1 んん・・・?
    猪の死体から這い出そうとしている
山犬をみつける
663 アシタカ サンはどうした!?くっ・・・
664 山犬 グルルル・・・
665 アシタカ おちつけ!おまえを助けたい
666 町の男2 山犬だ!山犬が生きてるぞーっ!
だ・・・だんな・・・なにを・・・
667 アシタカ ウウーッ
668 町の男3 だんな!
669 兵士1 どけい!小僧・・・なにをしている!?
670 アシタカ この者に案内をたのむのだ。
わたしがエボシを呼びにいく!
671 兵士2 さては魔性のたぐいか!どけッ!
672 アシタカ シシ神の首とタタラ場と
どちらがたいせつなのだ!?
    兵士、吹き矢でアシタカを狙う
673 町の男1 毒針だ!
674 アシタカ (毒針をかわしたが猪の重みで潰れる)
あっ!
675 町の男2 や・・・やめろ!
    再度、アシタカを狙う兵士
町の男が兵士の頭をくわで叩きつける
676 兵士1
    町の男達、山犬を助け出そうとする
677 町の男3 みんな力をだせ!テコをつかえ!
678 町の男達 せいや!せいや!せいや!せいや!
679 町の男1 (山犬が脱出したのをみて)
でたぞーっ!
680 アシタカ みんなは沢(さわ)をくだって
湖の近くにかくれていてくれ!
681 町の男達 へい!
682 町の男2 お気をつけて・・・
石火矢衆もやつらの仲間です
683 アシタカ あずかってくれ!
最後の矢が折れてしまった
684 アシタカ おまえはみんなといきな。
ヤックルをたのむ!
    山犬と共に走るアシタカ
685 アシタカ サンのところへ!そこにエボシもいる
    森のなか
686 ジコ坊 ジバシリどもにおくれるな。
今日こそけりをつけるのだ
687 狩人 ジコ坊さま
688 ジコ坊 オッ。様子はどうだった?
689 狩人 深手をおった乙事主はもののけ姫と
さらに森の奥(おく)へ向かっております
690 ジコ坊 やはりシシ神に助けをもとめる気だ。
ぴったりはりつけよ!
人と見やぶられてはシシ神は
でてこぬぞ
691 狩人 言われるまでもねぇ・・・
    ジバシリ去る
692 エボシ やつの顔にぬったのは猪の血か?
693 ジコ坊 へへ・・・ジバシリのわざだ。
おぞましいものよ
    深手を負った乙事主
森の中をサンと一緒にいる
694 サン がんばって!
もうじきシシ神さまのお池だから
    足を滑らせ、倒れる乙事主
695 サン (乙事主を支えれず、飛ばされる)
ああっ!
    岩に身体を打ち付けるサン
696 サン なにかくる!
697 サン 乙事主さまようすが
おかしいの・・・
698 乙事主 ・・・
699 サン もうちょっとだからがんばって!
700 山犬 とてもいやなものがくる
701 サン なんだろう?血のにおいで鼻がきかない
    木の枝を投げつける猩々たち
702 サン 猩猩たち・・・
703 猩々 おまえたちのせいだ。
おまえたちのせいでこの森おわりだ
704 サン なにをいう!森のために戦った者への
これが猩猩の礼義(れいぎ)か!
705 猩々 おまえたち破滅つれてきた!
生きものでも人間でもない者つれてきた!
706 サン 生きものでも人間でもないもの・・・?
707 猩々 きたーっ!森のおわりだ!
708 サン
709 山犬 ヴヴ〜ッ
    猪の皮をかぶったジバシリ登場
710 サン 戦士たちが・・・
711 乙事主 (猪の匂いを嗅いで)
もどってきた!
712 サン ハッ
713 乙事主 もどってきた!
黄泉の国から戦士たちが帰ってきた
続け!戦士たち!シシ神の所へいこー!
    走り出す乙事主
それに続くジバシリ達
714 サン 乙事主様落ち着いて!
死者は蘇ったりしない
(ジバシリをみて)
戦士の生皮をかぶって匂いを
消しているんだ。中は人間だ
(乙事主に)
止まって!奴らシシ神様のところに
案内させるつもりなんだ!
    岩を粉砕し、直進する乙事主
715 乙事主 シシ神よいでよ!
なんじ守りの神なら
我一族を蘇らせい!
人間を滅ぼせ!
716 サン 乙事主様!こころを鎮めて!
717 山犬 囲まれるぞ!そいつはもうダメだ!
捨ててこう!
718 サン ダメ!今、見捨てたらタタリ神に
なってしまう
おまえは母さんにこのことを知らせて!
人間の狙いはシシ神さまだ。
母さんが生きていれば知恵をかしてくれる
    迫るジバシリ達
719 サン おいき!山犬の血を
とだえさせてはだめ!
(山犬サンに近づき)いい子・・・
    山犬はモロのところへ
道の途中で倒れる乙事主
720 サン 最初の者を殺す!森じゅうに
おまえたちの正体を知らせてやる!
    アシタカと共にいる山犬が
遠吠えをしている
721 山犬 オオオオオーン
722 サン ・・・アシタカが・・・
723 乙事主 (ジバシリ達が近づくと)
ブギイイ!
    槍を振るい、乙事主から遠ざけるサン
724 サン おのれ!
725 乙事主 あついぞ!からだが火のようだ・・・
    乙事主から蛭のようなものがでてくる
726 サン (蛭のようなものを取り払いながら)
あっ!ダメーッ!乙事主さまタタリ神
なんかにならないで!
乙事主さま・・・!
(ジバシリが打ったつぶてが
サンの後頭部を直撃する)
アッ!
727 アシタカ (もう一匹の山犬の遠吠えを聞いて)
こたえた!わかるか?
728 山犬 サンがあぶない!
729 アシタカ いこう!
    山の上から飛び降りるアシタカ
730 サン (タタリ神になった乙事主の中で)
ウ・・・!・・・!あつい・・・
アァッ!いやだ・・・
タタリ神になんかなりたくない!
乙事主さま!
    山を猛スピードで駆け下りるアシタカ
731 山犬 遅い!のれっ!
    山犬に乗るアシタカ
732 アシタカ あっ!
    石火矢衆や唐笠連をなぎ倒す山犬
733 石火矢衆1 山犬だーッ!
734 石火矢衆2 ワァッ!
735 石火矢衆1
736 アシタカ (エボシをみつけ)
エボシ!
737 ジコ坊 おおッ
738 アシタカ くそっ!先にいけ!
    山犬に先を行かせ、アシタカはエボシと
対峙する
739 アシタカ エボし、話を聞けーッ!
740 エボシ アシタカかァーっ!?
741 アシタカ タタラ場が侍におそわれている。
シシ神殺しをやめてすぐもどれ!
女たちが戦っている。
男たちも山をくだった。
みなそなたの帰りを待っている
742 エボシ その話信ずる証拠(しょうこ)は?
743 アシタカ ない!できるならタタラ場に
とどまり戦いたかった
744 エボシ シシ神殺しをやめて
侍殺しをやれと言うのか
745 アシタカ ちがう!森と
タタラ場双方生きる道はないのか!?
    山犬の後を追うアシタカ
746 ジコ坊 あいつ・・・どっちの味方なのだ?
747 ゴンザ エボシさま、もどりましょう
748 エボシ 女たちにはできるだけの
備えをさせてある。自分の身は自分で
守れと・・・池だ!シシ神は近いぞ
749 ジコ坊 いよいよ正念場だ。油断するな。
750 唐笠連 あの女いなくとも・・・
751 ジコ坊 神殺しはこわいぞ。
あいつにやってもらわにゃ・・・
   
752 アシタカ ハァ・・・ハァ・・・
    モロを見つけ、駆け寄るアシタカ
753 アシタカ モロっ死んだのか・・・
サン、どこだー!サーン!
    乙事主のタタリのなか
754 サン アシタカ!
755 アシタカ ・・・!
    タタリ神になった乙事主とジバシリ
池に到着する
756 アシタカ 乙事主・・・
757 シバシリ 去れ、ワッパ!
758 アシタカ ここで争(あらそ)うとシシ神はでてこぬぞ。
(乙事主の前に立ち)
乙事主よ、しずまりたまえ!
乙事主、山犬の姫をかえしてくれ。
サンはどこだ。サン!きこえるか。
わたしだ!アシタカだ!
759 乙事主 プギャァァァァァア!
760 アシタカ (サンの足らしきものを見つける)
サン!くっ!
761 狩人1 (乙事主のタタリが付いて)
ワァッ
762 狩人2 あいつをしずめろ!
    ジバシリたちは一斉にアシタカに
向かって吹き矢を放つ
アシタカはしゃがんでかわす
763 狩人たち 殺せ!やつを射殺せ!
    山犬達がジバシリ達に噛み付く
764 山犬たち ガウウガウガウ
765 狩人たち うわっ〜
    アシタカ、乙事主に飛び移り
サンを探す
766 アシタカ サン!
767 サン アシタカ!
    乙事主に振り落とされたアシタカ
モロにぶつかり、池の中に
768 モロ やれやれ、あの女のために
のこしておいた最後の力なのに
769 狩人たち (退却しながら)
結界をはれ!
    唐笠連煙幕を張る
モロと乙事主対峙
770 山犬 おまえたち手出しをするんじゃないよ。
タタリなんぞもらうもんじゃない
771 乙事主 ぐぇー!
    飛び散るタタリ
772 山犬 もう言葉までなくしたか・・・
    木の影からみているジコ坊とエボシ
773 ジコ坊 よくやった。もういいぞ。
けが人の手当(てあて)をしてやれ。
いやいやおそろしいながめよ。
(シシ神をみて)
でた・・・
    乙事主、モロに突進していく
774 モロ わたしの娘をかえせ!
    タタリの中からサンを救い出すモロ
775 モロ アシタカ!おまえにサンが救えるか!?
    池の中から出てくるアシタカ
    エボシが放った石火矢に貫かれるシシ神
776 アシタカ ハッ・・・エボシ!うつな!
    一時動くを止めるもまた、歩き出す
777 アシタカ ああ?!エボシ!そなたの敵は
他にいるはずだ!
778 ジコ坊 石火矢が効かぬ・・・
779 エボシ 首をとばさねばだめか・・・
    アシタカ、モロに駆け寄りサンを
抱きかかえる
780 アシタカ (サンを抱きかかえながら池の中に)
サン!死ぬなァ!
    シシ神、乙事主の命を吸い取り
乙事主倒れる
また、モロも倒れる
781 ジコ坊 なんとシシ神は生命を吸いとるのか・・・
(シシ神が変身するのをみて)
むっ!?いかんディダラボッチになるぞ!
782 エボシ みなよく見とどけよ!神殺しが
いかなるものなのか。
シシ神は死をもつかさどる神だ!
おびえておくれをとるな
    エボシ、ディダラボッチに近寄る
783 アシタカ ・・・!?やめろお!
    アシタカが投げた剣は
エボシの石火矢に刺さる
784 アシタカ エボシ!
    シシ神がエボシをみると石火矢から
草が生え出す
785 エボシ クソッ、化け物め!
    草を払い、石火矢を撃つ
それがシシ神の首に当たり
シシ神の首が落ちる
786 アシタカ くっ!
787 ジコ坊 やったぁ!首おけを用意しとけ!
788 サン ぐっ
789 アシタカとサ
・・・
    シシ神は黒い液状の状態になり、
はじけ飛ぶ
790 ジコ坊 わぁ!
791 石火矢衆 ぐわ〜
792 兵士1 うっ
    シシ神に触れたものは皆、死ぬ
シシ神は横だけでなく、上にも
飛び散り、ことごとく命を吸い取る
793 エボシ ジコ坊、首おけをもってこい!
794 ジコ坊 かつぎ手がやられた!はやくはやく
795 エボシ シシ神の体にふれるな!
生命を吸いとられるぞ!受けとれ!
約束の首だ!(ジコ坊に投げる)
796 ジコ坊 おおっとっと!
    シシ神の間からモロの首だけがでてくる
797 モロ ばくっ!(エボシの右腕を食いちぎる)
     
798 ゴンザ (エボシにかけより)
エボシさま!
799 エボシ モロめ!首だけで動きよった・・・
800 ジコ坊 やばいぞ、いそげー
801 兵士2 ジコ坊さま!
    ジコ坊を追ってくるシシ神
802 ジコ坊 逃げろ!
    池の中から出てくるアシタカ
803 アシタカ 島へ逃げろ!
804 ゴンザ わしはおよげんのだ!
805 アシタカ 水の底を歩ける
    エボシを抱きかかえ、泳ぎアシタカ
その後を歩いて付いてくるゴンザ
    島についた三人
アシタカからもらったお守りを引きちぎる
806 サン そいつをよこせ!やつ裂きにしてやる
807 アシタカ モロが仇をうった。もう罰はうけている。
手を貸せ
808 ゴンザ エボシさま
809 エボシ よけいな情けは・・・
810 アシタカ おトキさんたちにつれて帰ると約束した
811 アシタカ (シシ神をみて)
首をさがしている・・・ここもあぶない、
サン。力をかしてくれ
812 サン いやだ!おまえも人間の味方だ!
その女をつれてさっさといっちまえ!
813 アシタカ サン・・・
814 サン くるな!人間なんか大キライだ!
815 アシタカ わたしは人間だ。そなたも・・・人間だ
816 サン だまれェ!わたしは山犬だ!
817 アシタカ サン
818 サン よるな!
    アシタカの胸にお守りを突き立てる
そのままサンを抱きしめるアシタカ
819 アシタカ すまない。
なんとかとめようとしたんだが・・・
820 サン もう終わりだ。なにもかも。森は死んだ・・・
821 アシタカ まだ終わらない。わたしたちが
生きているのだから。力をかしておくれ
    ディダラボッチは巨大化して森全体に
広がる
822 兵士 まて〜手伝え!
823 ジコ坊 どいつもこいつもまったく・・・
いかんいかん!・・・!首が動いとる・・・
    迫り来るシシ神
824 ジコ坊 こいつが呼んどるんだ!
    タタラ場
825 町の人1 とれたよ、トキ
826 トキ ありがとう
827 町の人1 やけに静(しず)かだね。
828 トキ 夜明けをまつつもりだ
829 町の人1 あの若者はエボシさまに
知らせてくれただろうか?
830 トキ アシタカさまはきっとやってくれるよ。
もうそのへんに来てるかもしれないよ。
(甲六の顔をみて)
あーあ、だらしない顔しちまって
おい!甲六!
831 町の人1 いまのうちさ寝かしといてやりなよ
832 トキ なんだろう気味が悪いね
    山からディダラボッチが舐めるように
流れてくる
  トキ ディダラボッチだ!
    逃げる侍たち
834 ひけェ、馬をひけぇ。こらー乱(みだ)れるな
835 トキ 持ち場をはなれるんじゃないよ
836 町の女1 どうしよう。こっちへ来るよ
837 甲六 だめだ。逃げよう
838 トキ タタラ場を守るんだ。
エボシさまと約束したんだから・・・
839 町の女1 あの人だ!
840 町の女2 アシタカさまだ!
    山犬に乗ってアシタカ、サンタタラ場まで
やってくる
841 アシタカ みんな逃げろー
シシ神が首をとりもどそうと
追ってきたんだ。あのドロドロにさわると
死ぬぞ!水の中へいけ。ドロドロが
遅くなる。男たちとエボシは
対岸(たいがん)をこっちへ向かっている。
私たちは首をとりもどしてシシ神に返す
842 サン アシタカ!
843 アシタカ いそげ!
844 トキ さわぐんじゃない!
845 町の女1 トキ、逃げよう
846 トキ みんなを湖へ!
847 町の女2 はい!
848 トキ 落ちついてケガ人や病人に
手を貸すんだよ
    逃げようとする町の人たち
849 トキ (山へ逃げようとするひと達に)
そっちへいっちゃだめだよ
850 甲六 ああ・・・大屋根が・・・
    燃えるタタラ場
851 甲六 もうだめだ!タタラ場が
燃えちまったらなにもかもおしまいだ
852 トキ 生きてりゃなんとかなる!
もっと深い所へ!はやく!
    山犬に乗って、ジコ坊たちを探す二人
853 サン いた、あそこ!
854 サン (山犬から降り)
おいき!
    ジコ坊に立ちはだかるアシタカ
855 アシタカ その首、まてェ!
856 ジコ坊 おぬしも生きとったかよかった
857 アシタカ 首をシシ神にかえします。
置いてはやく逃げなさい
858 ジコ坊 バカを言うな
いまさらとりかえしはつかん。
陽が出ればすべて終わる
見ろ・・・
生命を吸ってふくらみすぎた
のろまな死神だ。
陽にあたればやつは消えちまう
859 兵士 ジコ坊さま、追いつかれます、早く・・・
860 ジコ坊 天地(あまつち)の間に
あるすべてのものを
欲するは人の業というものだ・・・
861 アシタカ あなたを殺したくはない!
862 ジコ坊 いやぁ、まいったなァ。
そうこわい顔を・・・するな!
(突然、蹴りあげる)
863 アシタカ くっ
864 兵士 は!(サンに向かってナイフを繰り出す)
865 ジコ坊 走れ!
    ジコ坊の声と共に走り出す兵士
サンは唐笠連を倒し、兵士を追う
兵士、シシ神に道を阻まれ
首おけを捨てて逃亡
それを追うサン
866 サン アシタカ!
867 ジコ坊 おうっ
    首おけを受け止めるも受け止めきれず
首おけと一緒に転がっていく
岩にぶつかり、その上に首おけが乗る
868 ジコ坊 囲まれたぁ〜ああ〜いかん
朝陽よ、いでよぉ
869 アシタカ おけを開けろ
870 ジコ坊 わからんやつだな、もう手をくれた
871 サン アシタカ、人間に話したって無駄だ!
872 アシタカ 人の手でかえしたい
873 ジコ坊 ええい!どうなっても知らんぞ
(首おけをあける)
    首おけから溢れ出る緑の液体
874 ジコ坊 わっ!
    サンとアシタカ、シシ神の首を高々と
持ち上げる
875 アシタカ シシ神よ
首をお返しする!静まりたまえ!
876 ジコ坊 きよる!きよるぞ!!
    ゆっくりと首に近づくシシ神
首に触れると動かなくなる
877 甲六 動かなくなったぞ・・・
878 トキ 男たちだ!
879 町の女たち エボシさまー
880 ゴンザ ええい、さわぐな傷にさわる!
    朝日をあびるシシ神
そして、倒れる
881 町の人たち ああー・・・たおれる、たおれる
    地面に着くと爆発し
強風を起こす
882 町の人たち つかまれ!はなすな!
    強風のあとには辺り一面、草が茂る
883 甲六 すげぇ・・・
シシ神は花さかじじいだったんだぁ・・・
    目を覚ますアシタカ
884 アシタカ サン・・・サン。見てごらん
    サン目を覚ます
885 サン (辺りを見回して)
よみがえってもここは
もうシシ神の森じゃない
シシ神さまは死んでしまった
886 アシタカ シシ神さまは死にはないよ。
生命そのものだから・・・
生と死とふたつとも持っているもの・・・
わたしに生きろといってくれた
(腕をみるとアザが薄くなっている)
    サン山犬に乗っている
887 サン アシタカは好きだ。
でも人間をゆるすことはできない
888 アシタカ それでもいい。サンは森で
わたしはタタラ場で暮らそう。共に生きよう。
会いに行くよ。ヤックルに乗って
    場内
エボシと町の人たちが
集まっている
889 エボシ ざまぁない。わたしが山犬の背で
運ばれ生きのこってしまった。
礼(れい)を言おう・・・
誰かアシタカを迎えに行っておくれ。
みんなはじめからやり直しだ。
ここをいい村にしよう
890 ジコ坊 いやぁーまいった、まいった。
バカには勝てん
終わり
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